鬼を狩る子孫 第十話 大山詣り(4)
藤沢駅のホームは、休日の朝らしく人が多かった。
リュックを背負った登山客、買い物袋を提げた家族連れ、
そして、どこへ行くのか分からないまま流れに乗っているような人々。
悠夜、蓮、真衣、嵐山の四人は、
小田急江ノ島線の改札前で一度足を止めた。
「ここからやな。」
嵐山が、線路の先を見やる。
「江戸の頃もな、
大山詣りに向かう連中は、まず藤沢まで来たんや。」
蓮が少し驚いた顔をする。
「え、じゃあ……
この前見た旧大山街道と?」
「つながっとる。」
嵐山は即座にうなずいた。
「街道は “道” やけど、
藤沢は “集まる場所” やった。
講を組んで、酒飲んで、歌うて、
そっから大山へ向かったんや。」
真衣がホームを見回す。
「なんか……
登山っていうより、お祭りみたい。」
「せや。」
嵐山は笑う。
「落語の『大山詣り』も、
信仰と娯楽がごっちゃになっとる話やろ。」
電車が入ってくる音が近づく。

悠夜は、改札の柱に貼られた路線図を見つめていた。
藤沢、相模大野、伊勢原。
点が線になって、山へ近づいていく。
(……街道の先に、山がある。)
ふと、あの落書きの蛇が頭をよぎる。
(あれは、誰かが山へ呼んでたんやろか。)
「お、来たで。」
嵐山の声で我に返る。
電車に乗り込み、扉が閉まる。
藤沢の町並みが、ゆっくりと後ろへ流れていった。
悠夜は思った。
社会科の課題として始まったはずなのに、
これはもう、
ただの調査では終わらないかもしれない、と。


