鬼を狩る子孫 第二部・過去編 第二章 洛中の渦(5)
第5回 道場の静寂
祭の喧噪を離れ、朔太郎は裏通りを歩いていた。
小さな道場の門が開いている。
中から、稽古を終えた若武者たちが出てくる。
額に汗をにじませ、木刀を肩に担いでいる。
「さっきのは狙ったやろう」
「当たっただけや」
声が荒い。
門前で足が止まる。
木刀が地に落ちる。
互いに睨み合う。
やがて、片方が腰の刀に触れる。
まだ抜かぬ。
だが、指がかかるだけで空気が変わる。
通りを行く者が足を止める。
そのとき。
「やめとき」
低い声。
無精髭の浪人が立っている。

いつの間にか、二人の横に。
刀に手はない。
ただ、若武者の目を見る。
静かに。
長く。
若武者の喉が鳴る。
刀から手が離れる。
「……今日はこれで終いや」
木刀を拾い、互いに背を向ける。
浪人は何も言わない。
そのまま通りを歩いていく。
朔太郎は、その背を見送った。
抜けば、斬る。
斬れば、残る。
洛中は狭い。
狭いところでは、刀は重い。
浪人は刀を抜かせなかった。
抜かぬことで、収めた。
朔太郎は歩き出す。
祭の太鼓が、遠くで鳴っている。

