鬼を狩る子孫 第八話 代議士への道(12)

影の先にあるもの

図書室を出ると、外はすでに薄暗かった。
廊下の蛍光灯がぽつりぽつりと点り、
三人の影が床に長く伸びていた。

蓮はメモを胸に抱えながら言った。

「……こうしてまとめてみると、
 全部が “ひとつの方向” に進んでる気がするね。」

悠夜が言う。

「顧問の先生が窓口になって、
 業者が動いて、
 後援会に寄付が集まって、
 議員さんの力が強くなる。」

真衣も静かに続けた。

「そして、その議員さんには……
 副理事長先生という “後輩” がいる。」

三人は立ち止まり、互いの顔を見た。

言葉にすると、
それはあまりにも大きすぎて実感がない。

だが、
嘘のような話なのに、
妙に整っていて、
“そうなっていく理由” だけは理解できてしまう。

悠夜が静かに息を吸い込んだ。

「……副理事長先生、
 ほんとは “代議士” になるための準備を
 ずっとしてきたんじゃないか?」

創作小説の挿絵

蓮と真衣は、否定できなかった。

直接の悪事はひとつもない。
ただ、人を褒め、励まし、
もともとある人脈を使い、
“誰の責任にもならない流れ” を作っているだけ。

しかしその流れは——
ゆっくりとひとつの場所へ向かっていた。

代議士という頂点へ。

真衣がぽつりと言った。

「……でも、私たちにはどうすることもできないよね。
 悪いことを見つけたわけじゃないし。」

蓮もうなずく。

「うん。
 誰も命令してないし、誰も損してない。
 むしろ “みんなが喜ぶ形” で動いてる。」

悠夜は廊下の窓から外を見た。
街灯の光が校庭の端に落ちている。

「だからこそ、
 この流れがどこに行くのか見ておくしかない。
 そのうち、もっとはっきり分かる時が来るかもしれないから。」

真衣はその言葉に安心したように微笑んだ。

「うん……。
 ただ怖いだけじゃなくて、
 なんか “知りたい” って気持ちも出てきた。」

蓮も頷く。

「次は “どうしてこんな構造が生まれるのか”
 その理由を知りたいよね。」

悠夜は思い出したように言った。

「そういえば嵐山先生、
 今度の授業で “鎌倉時代の権力の移り変わり” をやるって言ってた。」

真衣が目を輝かせる。

「歴史でも、
 “誰がどうやって力を握るか” って同じなんだよね、きっと。」

蓮は静かに笑った。

「じゃあ次は、歴史から学ぼうか。
 こういう “影の動き方” って、昔からずっとあるのかもしれないし。」

三人は歩き出した。
廊下に三つの影が並び、
ゆっくりと校舎の出口へ向かって伸びていく。

その影の先に、
どんな “真実” が待っているのか。
三人はまだ知らない。

けれど——
確かに一歩、前へ進んだ。

第八話 完