鬼を狩る子孫 第八話 代議士への道(11)
つながり方の法則
放課後の図書室。
三人はいつもの奥の席に並んで座っていた。
机の上には、備品記録、新聞記事、名刺、学校新聞のコピーが並んでいる。
蓮がペンでそれらを軽く叩きながら言った。
「……見えてきた気がするんだ。
全部がバラバラに動いてるようで、実は“順番”がある。」
「順番?」
真衣が聞く。
蓮はメモ用紙に三つの丸を描いた。

1 体育部顧問
2 業者
3 議員(後援会)
「この三つが動く順番が、毎回ほぼ同じなんだよ。」
悠夜が前のめりになる。
「どういうこと?」
蓮は静かに説明した。
「まず “顧問の先生” に用件が来る。
次に “業者” が動くようになる。
そのあとで “議員の後援会” の記事が新聞に載る。」
三人は顔を見合わせた。
真衣は思わず言葉を漏らす。
「……つまり、
顧問の先生を通すと、業者も議員も同じ方向に動くってこと?」
蓮はうなずいた。
「直接の証拠はないけど、
全部この “順番” で起きてる。
これって……仕組みなんじゃない?」
悠夜は腕を組んで考えた。
「じゃあ、副理事長先生は……
この順番を作ってる、ってこと?」
蓮ははっきりとは言わず、
ただ言葉を選ぶように答えた。
「仕組みを “作った” のか、
仕組みに “乗ってる” のかは分からない。
でも、この流れを一番うまく使える立場にいるのは……
あの人だけだと思う。」
ずっと静かに聞いていた真衣が言った。
「顧問の先生って、悪いことしてる感じ全然なかったよね。
むしろ一生懸命で……人の役に立ちたいって思ってるような……」
「だからこそだよ。」
悠夜がつぶやいた。
「善意で動く人ほど、
“利用しやすい” ってことなんじゃない?」
しばらく沈黙が落ちた。
三人はどこか怖かった。
だが同時に、
「こんな仕組みが成立するのか」という不思議な感動もあった。
蓮が再びメモに目を落とした。
「顧問の先生が動くと、
業者が動く。
業者が動くと、
後援会にお金が流れる。
お金が流れると……
議員さんの立場が強くなる。」
そして、蓮は最後に一行書き加えた。
「議員が強くなると、
その周りにいる “誰か” も強くなる。」
悠夜と真衣が、その一行を見つめた。
名前は書かれていない。
だが、三人にはその “誰か” が誰であるか、
もう言うまでもなかった。
図書館の窓に貼りつく夕闇が、
ゆっくりと深くなっていく。
その影の中で、
副理事長の “利権構造の入口” がついに姿を見せ始めていた。


