鬼を狩る子孫 第八話 代議士への道(9)

古い記事に写った二人

翌日の昼休み。
蓮は図書室の一角で、学校新聞のバックナンバーを整理していた。
校内の歴史を調べるのが好きで、ときどき古い記事を眺めては
「昔はこんな行事があったんだ」と一人で楽しむのが習慣になっていた。

そのとき、
ふと一枚の古い特集号が目に留まった。

《本校卒業生・進路だより:母校訪問特集》

記事の中には、
大学で活躍する卒業生やOBとして学校を訪れた人の写真が並んでいる。
その中の一つに、見覚えのある名前があった。

「……副理事長?」

蓮は写真を手前に引き寄せた。

副理事長が大学のOB会に参加した際の写真で、
“創部100周年アメフト部式典” とタイトルが添えられていた。

創作小説の挿絵

蓮は写真全体をゆっくり眺めた。
たくさんのスーツ姿の来賓が並んでいる。

その中に、見覚えのある顔があった。

「……え?」

口から声が漏れた。

○○議員。

昨日、新聞記事で見たあの顔だ。
副理事長の列の、少し離れた位置に立っている。
大学名も、式典名も、確かに同じ。

「同じ大学……
 しかもアメフト部で一緒だったってこと……?」

蓮はしばらく写真を見つめ、
頭の中で点をつないでいった。

学校に頻繁に訪れる議員秘書。
議員の後援会に寄付していた体育用品会社。
副理事長が顧問にかけた “親切” の言葉。
そして議員の後継者問題。

たったこれだけでも偶然かもしれない。
しかし、この写真は違った。

二人が “公には語られていない強い縁” を持っていることを示していた。
同じ大学、同じアメフト部。
上下関係も、結束も、体育会ならではの強さがある。

その縁が
「学校 → 顧問 → 業者 → 後援会 → 議員」
という線の中心に、静かに座っているのではないか——

そんな気がした。

そこへ悠夜と真衣がやってきた。

「蓮、何か見つけたの?」
真衣がのぞき込む。

蓮は写真を見せた。

「見て。これ、副理事長が大学のアメフト部の式典に出たときの写真なんだけど……
 この右端の人、昨日新聞に載ってた議員さん。」

悠夜と真衣は顔を近づけた。

「ほんとだ……同じ写真に写ってる。」
「これ、どういうこと?」

蓮は深呼吸して言った。

「たぶん、二人は大学の先輩後輩。
 だから “後援会” とか “業者の寄付” とか “秘書が学校に来る理由” が……
 全部、急にありえる話になる。」

三人はしばし黙り込んだ。

これは証拠ではない。
ただの一枚の写真だ。

けれど、
その写真は——
学校の外側から伸びていた影が、
“どこから来ていたか” を示す地図のようでもあった。

悠夜が低くつぶやく。

「……やっぱり、全部つながってるのかもな。」

図書室の窓から入る光が、
古い新聞の紙面を淡く照らしていた。