鬼を狩る子孫 第八話 代議士への道(8)

後継者を探す影

放課後の図書室。
蓮は新聞棚から新しい地域紙を取り出し、
紙面を何気なくめくっていた。

ふと、一つの記事で指が止まった。

「○○議員、体調面を理由に次期選挙で勇退の可能性 後継者選びへ」

「へえ……」
蓮が声を漏らすと、近くにいた悠夜と真衣が寄ってきた。

「議員さんのニュース?」
真衣が覗き込む。

蓮は記事を読み上げた。

「──高齢で、次の選挙には出ないかもしれないって。
 後継候補がまだ決まっていないらしい。」

悠夜は腕を組んだ。
「後継者かあ……難しそうだな。」

「だいたい秘書さんとか、政党関係者がなるんだよね?」
真衣が答えた。

蓮はここまでの数日を思い出していた。

体育館裏の封筒。
後援会の申込書。
寄付していた体育用品業者。
学校に来ていた議員秘書。
副理事長が顧問にかけた“やさしい言葉”。

それらは一つひとつは小さな点にすぎない。
しかし、ときどき同じ名前が顔を出すたび、
胸の奥に小さな波紋が広がる。

創作小説の挿絵

真衣が新聞の見出しを指でなぞった。

「……なんか、最近よく見かけるね、この議員さんの名前。」

「うん。
 別に関係あるわけじゃないけど……
 でも、ちょっと気になるよな。」
悠夜がそう言って新聞をのぞき込む。

蓮は静かにうなずいた。

「学校とは全然違う世界なのに、
 名前だけは、なんか近くにある感じがする。」

三人はしばらく黙った。
政治と学校がつながる理由など、普通はない。
ただの偶然かもしれない。

だが、
“ここ数日、似た名前ばかり見ている”
という事実だけが、胸の奥に残った。

蓮は新聞をそっと棚に戻した。

「まあ……いまはただのニュースってことでいいよね。」

真衣は笑ってうなずいたが、
どこか心の奥にざらりとした感触を覚えていた。

図書室の窓から射し込む夕陽が、
棚の影を静かに伸ばしていた。

その長く伸びる影だけが、
三人の胸に淡い不安を落としていった。