鬼を狩る子孫 第八話 代議士への道(7)
一本につながる線
週明けの昼休み。
真衣は図書委員室で、学校行事の資料を整理していた。
古いファイルをめくっていると、
備品の購入一覧や業者名の記録がいくつも出てくる。
「……あれ?」
ある記録が目に留まった。
体育館の備品。
行事で使うステージ用品。
教材用の小道具。
そのどれもに——
同じ人物の決裁印が押されていた。
“体育部顧問 小田切”
そこへ、悠夜と蓮が入ってきた。
「真衣、何見てるの?」
蓮がのぞき込む。
「備品の記録なんだけど……これ、見て。」
真衣は複数のファイルから印刷物を抜き出し、
三人の前に並べた。
「体育館の器具は分かるよね?
でもね、このステージ備品も、
教材の消耗品も、
ぜんぶ最終決裁が——同じ先生なの。」

悠夜が目を丸くする。
「……体育部顧問が?
教材まで?」
「そう。普通は担当の先生ごとに違うはずなのに……
なぜか、この人 “だけ” が全部の業者と接点を持ってる。」
蓮は封筒の名刺を思い返した。
「体育用品の会社……
後援会に寄付してた会社もあったよね。」
真衣は慎重に言葉を選んだ。
「まだ、全部がつながるってわけじゃないけど……
もし誰かが業者を動かしたいなら、
一番やりやすいのは “この先生を通すこと” だと思う。」
三人はしばらく黙り込んだ。
体育館裏の封筒。
議員の後援会申込書。
業者の名刺。
寄付の記事。
議員秘書の来校。
そして、副理事長が顧問に見せた “親切” 。
それらはバラバラの点だった。
だが今、
すべてが顧問という一点につながった。
悠夜は小さく息をつく。
「……だから顧問の先生が “動きやすい” わけか。」
蓮は頷いた。
「しかも本人は、きっと “自主的にやってる” つもりなんだ。」
真衣は言葉にしなかったが、
胸の中に重く静かな感覚が広がっていた。
顧問は悪人ではない。
むしろ、誰より学校に尽くしている先生だ。
だからこそ——
誰かがその “善意” を利用すれば、
最も目立たず、最も効率よく動いてしまう。
それが今、三人の前に見えてしまった。
窓の外では、
校庭の白線が一本、夕陽に照らされていた。
まるで、全ての点が
ひとつの線に結ばれたことを示しているかのように。


