鬼を狩る子孫 第八話 代議士への道(4)
PTA会長のなにげない一言
翌週、学校公開日を控え、
校内はどこかそわそわした空気に包まれていた。
廊下には案内表示のポスターが貼られ、
掲示物のチェックに先生や生徒が走り回っている。
悠夜と蓮と真衣は、
図書委員として来客用の冊子を配布する手伝いを任され、
昇降口近くで作業をしていた。
「助かるわ〜、ほんとに。三人とも慣れてるのね。」
明るい声でそう言ったのは、PTA会長の中村さんだった。
人懐っこい笑顔でいつも学校行事を盛り上げる人物だ。
「いえ、そんな……」
悠夜が返すと、中村会長は少し身を寄せてきた。
「そういえばね、最近ちょっと気になることがあって。」
三人は顔を見合わせた。
中村会長は声を落として続けた。
「○○議員の秘書さん、知ってる? あの若い方。
ここ最近、やたら学校に顔を出すのよ。
校長先生と何か話してるみたいでねえ……
学校と議員さんに、何かあるのかしら?」

言葉は軽い雑談だった。
政治的な意図も、怪しい口ぶりもない。
ただ、“最近よく見る人” の話題として語っただけだ。
けれど、その一言が三人の胸にひっかかった。
蓮は思わず尋ねた。
「議員の秘書さんって、学校に来るものなんですか?」
「普通は来ないわよ?」
中村会長は笑って肩をすくめた。
「まあ、学校公開日もあるし、後援会の関係かもしれないけどねえ。」
真衣は手に持った冊子を見つめたまま、
小さく息を呑んだ。
議員の後援会申込書。
体育用品業者の名刺。
体育館裏の封筒。
そして今度は “議員秘書が 頻繁に来ている” 。
線がつながっているわけではない。
けれど、偶然にしては少しずつ積み上がっている気がした。
「ふしぎだね……」
蓮がつぶやくと、
悠夜も真衣も、はっきり理由もないままうなずいた。
中村会長は気づかぬまま談笑を続け、
三人は配布用冊子を手に再び作業へ戻った。
学校はいつもと同じ夕方の光に包まれている。
けれどその明るさの奥に、
見たことのない “別の顔” がひそんでいるように感じられた。


