鬼を狩る子孫 第七話 北条氏の策謀(4)

静かに閉ざされる扉

昼休み前。
悠夜は教室でノートを開いていたが、文字が頭に入ってこなかった。
図書室で起きた異変が、あまりに早すぎたからだ。

蓮が戻ってきて、小声で告げた。

「悠夜……閲覧ブース、今日から使えないって。」

「昨日まで普通に使えてたのに?」

「 “設備点検” だって。でも、図書委員も聞いてないらしい。」

その言葉に、悠夜は静かに息を吸った。

──動きが速すぎる。

放課後、二人は図書室へ向かった。
扉を開けると、白紙の掲示が目に入った。

《閲覧ブース1〜3 利用中止》

理由は簡素な一行だけ。

だが、利用中止のロープが張られ、
中の机や椅子が端に寄せられていた。

創作小説の挿絵

蓮がつぶやく。

「点検って……机まで動かす必要ある?」

「少なくとも、俺たちがここで調べてた痕跡は消したいんだろうな。」

悠夜の声は落ち着いていたが、その目は鋭かった。

二人は資料室へ向かった。
事故報告書の棚が気掛かりだったからだ。

だが──棚は空になっていた。

昨日まで積み上がっていた分厚いファイルの束が、
きれいに、跡形もなく消えていた。

「……全部、なくなってる。」

蓮の声は震えていた。

悠夜は棚の金属枠に触れ、わずかな埃の乱れを指先で感じ取った。

「蓮、これは “移動された” 痕だ。残ってる。」

「じゃあ……やっぱり、俺たちが見られてたってこと?」

「正確に言うなら──
 **俺たちの行動が“把握されていた”**ってことだ。」

資料室の奥から、慌ただしい書類の音がした。
ほどなくして、教頭が姿を見せた。

「君たち、もう帰りなさい。
 資料室は整理中だよ。」

穏やかな口調。だが、その手には鍵束が握られていた。

蓮が不安げに後ろを振り返ると、
棚の前にはすでに「関係者以外立入禁止」の札が置かれていた。

──まるで、最初からそうだったかのように。

廊下へ出ると、蓮が小声で問う。

「悠夜……これ、偶然じゃないよね?」

「偶然ならファイルは消えない。
 偶然なら札はすぐには掛からない。
 偶然なら、教頭が“整理中”なんて即答できない。」

悠夜は歩調を緩めずに言った。

「つまり──
 学校の一部じゃなく、“組織として動いている” 。」

蓮は息を吞む。

「じゃあ……俺たち、どうする?」

悠夜は立ち止まり、夕焼けに染まる校庭を見た。

「蓮。
 記録を消すってことは、
 “消さないと困る人間がいる” ってことだ。
 その理由を探る。」

蓮は黙って頷いた。

その手はわずかに震えていたが、
その目には、逃げない意志が灯っていた。