鬼を狩る子孫 第七話 北条氏の策謀(1)
静かに蘇る影
秋の終わりの昼休み。
風が止んだかと思うと、校庭をかすめる落ち葉の音だけが聞こえる。
悠夜は中庭のベンチに腰を下ろし、
斜め前の銀杏の木を見上げた。葉はだいぶ落ち、枝の隙間から冬の空がのぞいている。
「……なあ悠夜、ちょっと変な話を聞いたんだけど」
蓮が声を潜めて隣に座った。
「昔、この学校で “事故の隠蔽” があったらしい」
「隠蔽?」
悠夜は思わず聞き返した。

「二年の先輩が言ってた。実験棟で大怪我した生徒がいたのに、報告では “軽傷扱い” だったって」
真衣が驚いた表情を見せる。
「そんな話、聞いたことないよ……」
蓮はさらに声を落とした。
「それだけじゃない。“勝手に物が動いた” とか、“誰かに押されたようだった” とか、妙な噂まである」
悠夜は銀杏の枝に視線を戻した。
空気がわずかに冷えていくような感覚。
そしてそのとき――
胸の奥に、別の時代の光景がふっと浮かんだ。
――和田合戦。
授業で名前だけ聞いたことのある戦。
和田義盛が北条義時の策謀で追い詰められた出来事。
(……でも、どうして今、この史実を思い出したんだ?
和田氏がどうして北条にあっさり敗れたのか……
あの理由を、もっとちゃんと知りたい気がする……)
真衣の声で我に返る。
「悠夜? どうしたの?」
「いや……なんでもない。ただ、この話……何か、引っかかる」
その瞬間、校舎の二階を歩く副理事長の姿が見えた。
落ち葉を踏む音もないのに、彼の周囲の空気だけが妙に重たく見えた。
真衣が小声でつぶやく。
「……あの人のまわり、空気……揺れてる?」
悠夜は心の内で息を呑んだ。
(過去と現在……どこかで繋がっているような……そんな予感がする)


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