鬼を狩る子孫 第三話 新任校長の履歴書(23)

嵐丸と歴史クラブ

講堂を包んでいた闇はすっかり消え、窓から差し込む朝の光が、磨かれた床にやわらかく反射していた。
長い夜が明けたのだ。

悠夜、蓮、大地は互いの顔を見合わせ、そして嵐山先生の方を振り向いた。
大きな体を伸ばし、ふう、と息を吐いた嵐山の表情は、いつになく穏やかだった。

「先生……」

悠夜が一歩踏み出した。

「僕たち……先生のことを、“嵐丸” って呼ぶことにしました」

蓮も続ける。

「だって先生、力士みたいに頼もしかったし、僕らを守ってくれた……その名前がぴったりなんです」

大地は力強くうなずいた。

「これからも……嵐丸先生として、ずっと一緒に戦ってほしいんです」

嵐山は目を丸くし、次の瞬間、豪快に笑った。

「なんやそれ! 力士やなんて……けどまあ、悪ぅないな。嵐山でも嵐丸でも、好きなように呼んでええ。せやけど──その呼び名に恥じんように、わしも踏ん張らなあかんな」

三人は顔をほころばせた。胸の奥が温かくなるのを感じた。

外へ出ると、由比ガ浜の海が朝日にきらめいていた。

波の音が静かに響き、どこか新しい始まりを告げているようだった。

創作小説の挿絵

「ねえ先生」

悠夜が口を開いた。

「僕たち、先生の歴史クラブに入りたいんです」

蓮が笑って言葉を継ぐ。

「鎌倉の町のことも、もっと知りたいし……歴史を調べるのって、きっと面白いと思う」

大地も拳を握りしめて言った。

「それに……歴史を学べば、今の僕たちが進む道も分かる気がするんです」

嵐山は少年たちを見つめ、にやりと笑った。

「ほぉ、ええ心がけやないか。鎌倉は歴史の宝庫や。大仏も寺社も、歩けば遺跡や史跡にぶつかる。そこで育つお前らが歴史に興味を持つんは、自然なことや。……よし、これからは “嵐丸と歴史クラブ” の始まりやな!」

三人の顔が輝いた。
潮風が頬を撫で、空には真新しい一日の光が広がっていた。

 ──かくして、闇を祓った少年たちは、新たな仲間と共に、未来への第一歩を踏み出したのであった。


[第三話完]