鬼を狩る子孫 第三話 新任校長の履歴書(19)

歪む教壇

放課後の教室。窓から差し込む夕陽が赤々と床を染め、影が長く伸びていた。
悠夜たちは机を囲み、小声で話していた。

「なあ……やっぱり、あの影、校長に憑いてるんじゃないか?

蓮の声は震えていた。

「普通の人間じゃない。演説のときも、目が……光ってた」

大地が腕を組み、唸るように言う。

「証拠はないけど、俺もそう思う。あれは人の気配じゃなかった」

そのとき、校舎の廊下から重い足音が響いてきた。

「……!」

三人は反射的に口を閉ざす。

扉が開き、校長が姿を現した。
昼間の疲れなど一切見せぬ、異様なほどの精力に満ちた様子だった。
眼鏡の奥の瞳は赤く濁り、視線を向けられただけで体が強張る。

「君たち……まだ残っていたのか」

声は低く、だが奇妙に響き渡る。空気そのものが震えているようだった。

悠夜は勇気をふりしぼり、かろうじて口を開いた。

「校長先生、僕たちは……」

言葉を言い終える前に、教壇の蛍光灯が一斉に点滅した。
バチッと音を立て、ガラスが砕け散る。
生徒たちの悲鳴が教室中に響いた。

校長は微動だにせず、ただ冷たい笑みを浮かべていた。

「知りすぎるのは、子どもには毒だ」

次の瞬間、窓辺のカーテンが大きく揺れ、黒い影が蛇のように床を這い始めた。
悠夜、蓮、大地の胸に、一斉に恐怖が押し寄せる。

──校長は、もう人ではない。

そのとき。

「──やめなはれ!」

教室の扉が勢いよく開き、大柄な影が飛び込んできた。
嵐山先生だった。

普段の飄々とした笑みは消え、額には汗が光っている。

創作小説の挿絵

「子どもらを脅してどうしますんや! 校長先生!」

嵐山は腕を大きく広げ、悠夜たちの前に立ちふさがった。
影がざわりと揺れ、校長の口元が歪む。

「嵐山先生……これは教育だ。弱い者には恐怖を……」
「恐怖で縛るんは教育やあらへん!」

嵐山の声が教室を震わせた。

「子どもらの心を守るんが、教師の務めや!」

その瞬間、悠夜たちははっきりと悟った。
──嵐山先生は、完全に自分たちの味方だ。