鬼を狩る子孫 第三話 新任校長の履歴書(18)

嵐山の一喝

翌日の講堂。全校集会が開かれ、壇上には校長と教頭が並んでいた。
生徒たちは整列しながらも、前日の異様な空気を思い出し、ざわざわと落ち着かない。

「静粛に!」

教頭の鋭い声が響く。細い目がきらりと光り、生徒たちはしぶしぶ口を閉じた。

校長が演壇に進み出る。

「近頃、この学校には根拠のない噂が広がっているようだ。影が動いただの、不審な声がしただの……くだらん話に惑わされるのは、実に情けない!」

校長の声は前日にも増して重く響き、生徒たちの胸を圧した。
悠夜たちは思わず顔を見合わせる。
──もう完全に普通じゃない。

そのとき、蓮が耐えきれずに声をあげてしまった。

「でも、影は本当に……!」

講堂が凍りつく。
校長の顔がぎょろりと蓮に向けられ、瞳が不気味に光を宿した。

「立場をわきまえよ!」

叩きつけるような声が、壁に反響して響き渡った。

蓮の肩が小さく震える。悠夜と大地がすぐに彼をかばうように前に出た。

その瞬間、壇上の端から低い声が響いた。
「──もうええ加減にしなはれ」

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嵐山先生がゆっくりと歩み出てきた。大柄な体をぐっと張り、校長の前に立ちはだかる。

「子どもらの声を抑えつけてどうしますのや。見たこと、聞いたことを口にする。それが学びの始まりやろ」

校長が眉をひそめる。

「嵐山先生……あなたまで、そのような与太話に加担するのか」

嵐山は首を振り、にやりと笑った。

「与太話かどうかは、まだ分からん。せやけどな──子どもらの好奇心を踏みにじるんは、この学校にとって一番の不幸や」

講堂の空気がびりびりと震えた。
いつもは冗談を交えて笑いを誘うその声が、このときばかりは石のように揺るぎなく、まっすぐに響き渡った。
生徒たちはもちろん、教師たちさえも言葉を失い、誰もがその大きな背中に視線を奪われていた。
嵐山の言葉には、軽さをかなぐり捨てた正義感と、子どもたちを守ろうとする揺るぎない覚悟が宿っていた。

その背中を見つめながら、悠夜たちは心の奥に強い確信を抱いた。

──この人は、味方だ。