鬼を狩る子孫 第三話 新任校長の履歴書(10)
立場をわきまえたまえ
放課後の校庭。
悠夜、蓮、大地の三人が並んで腰を下ろし、低い声で話し合っていた。
「新聞には “卒業” って書いてなかったんだ」
蓮が興奮気味に報告すると、大地も続けた。
「町で聞いた噂では、校長の昔を知ってる人がいるらしい。……やっぱり怪しい」
悠夜は腕を組んで黙り込んだ。
しかし、その沈黙を破ったのは思わぬ声だった。
「……君たち、何をこそこそ話しているのかね」
背後から現れたのは教頭だった。

きつねのような細い目を細め、にこやかに笑みを浮かべている。
だが、その声には冷たい棘が潜んでいた。
「校長先生のお名前を軽々しく口にするなど、感心しませんな。生徒が大人の経歴に口出しするのは、分を超えているでしょう」
三人は思わず息をのむ。
教頭はさらに一歩近づき、声を落とした。
「生徒は生徒らしく、立場をわきまえることです。余計な詮索は、君たち自身のためにもならない」
その目は笑っていながら、全く笑っていなかった。
.png)
と、その時。
校庭の向こうから、校長が歩み寄ってきた。
青いスーツに身を包み、いつものように柔らかな笑みを浮かべている。
「おや、楽しそうだね。若者らしく議論するのはいいことだ」
そして、軽く手を振りながら付け加えた。
「ただし、その熱意は学問や未来に向けてくれると、私としても嬉しいな」
教頭は口を閉じ、三人は互いに顔を見合わせた。
残された胸の内には、かえって重い疑念が刻まれていた。


