鬼を狩る子孫 第三話 新任校長の履歴書(8)
古い図書館での発見
週末の午後、蓮は一人で自転車をこいでいた。
目指すのは、町でいちばん大きな市立図書館。
百年以上前に建てられたという古い歴史を持つ建物で、白い壁と茶色い屋根がどこか重厚な雰囲気を漂わせていた。
観光客でにぎわう通りから少し外れると、あたりはしんと静まり、蝉の声ばかりが響いていた。
「うわ……ほんとに古そうだな」
蓮は自転車を止め、胸をどきどきさせながら玄関をくぐった。
中に入ると、木の棚が整然と並び、紙の匂いが漂っていた。
奥には資料室があり、机の上には分厚い縮刷版の新聞が積み重なっている。
蓮は受付で小さな声を出した。
「あの……新聞の古いやつ、見せてもらえますか」
係員が頷き、蓮は縮刷版を机に運んだ。
重たくて腕がぷるぷる震える。
「よっこらしょ……」
まるで大人の探偵になったような気分でページをめくる。

最初は字の細かさに目が回りそうだった。
だが「赴任」「着任」「校長」といった言葉を探すうちに、ある記事が目にとまった。
──数年前の地方紙。校長が前任の学校に着任したときの記事だった。
「……あれ?」
蓮は思わずつぶやいた。
そこに書かれていた経歴紹介は、配られたプリントとは微妙に違っていた。
プリントには「ハーバード大学卒業」とはっきり記されていたのに、新聞記事には「ハーバード大学に留学経験あり」としか書かれていなかった。
──“卒業” という言葉が、どこにも見当たらないのだ。
「これは……!」
蓮は思わず身を乗り出した。
手帳を広げ、発見を書き込む。
「新聞には “卒業” って書いてない……ただ留学ってだけだ。プリントと全然違う!」
胸の奥が熱くなり、早く悠夜と大地に報告したくてたまらなくなった。
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夕暮れが迫る窓の外では、山の影が濃く落ちていた。
古い図書館の静けさの中で、蓮は初めて「これは本当に怪しい」と確信したのだった。


