鬼を狩る子孫 第三話 新任校長の履歴書(7)
経歴の影を追う
放課後の図書室は、夕陽で窓ガラスが赤く染まっていた。
悠夜、蓮、大地の三人は机を囲み、例の経歴プリントを広げてひそひそ声で話し合っていた。

「なあ、やっぱ変だよな」
蓮が声をひそめる。
「 “国際的な教育機関で研鑽” って、何だよそれ。どこだかサッパリだぞ」
「それに、ハーバード卒業って言うわりに、どんな勉強したか全然書いてない」
悠夜がうなずいた。
「もし本当に卒業したなら、もっと自慢してるはずだ」
大地が腕を組んで眉をひそめる。
「でもさ、俺たちが直接ハーバードに電話して “卒業しましたか?” なんて聞けるわけないだろ」
「それは無理だな」
悠夜が苦笑した。
「でも、もうちょっと身近なところから調べられる。たとえば……」
「たとえば?」
蓮が食いつく。
「校長が前にいた学校。もし何か変なことがあったなら、新聞とかに残ってるかもしれない」
悠夜は指で机をとんとんと叩いた。
「それから、出身高校。卒業生の進学先って名簿に載るだろ? そこに “ハーバード” って書いてあるかどうか調べてみればいい」
蓮がぱっと顔を輝かせる。
「なるほど! 俺、図書館で古い新聞とか探すよ。縮刷版ってやつ、前に社会科で見たし」
「俺は……」
大地が渋い顔をした。
「近所の知り合いに、校長の昔の学校のこと聞いてみるよ。ただし、怪しまれない程度にな」
「それでいい。俺が全体をまとめる」
悠夜がうなずいた。
「小さいことでも積み重ねれば、何か見えてくるはずだ」
蓮がいたずらっぽく笑った。
「おー、探偵団のリーダーは悠夜ってわけか」
「ま、俺は副隊長でいいや。大地は……会計係な」
「なんで俺が会計係だよ」
大地がむっとする。
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三人は笑い声を押し殺しながら、夕陽に照らされた図書室を後にした。
窓ガラスに映る影は三つ。
けれど、その後ろにもう一つ、細長い影が重なったように見えたのは気のせいだったのか──。


