鬼を狩る子孫 第二話 影を落とす契約書(18)

村尾の告白

鬼が闇に消え、坑道の前に静けさが戻った。
だが、その場には重い空気が漂っていた。

膝をついたままの村尾に、悠夜が一歩踏み出す。

「どうして……どうして先生があんなことを」

村尾はうつむき、かすれた声で答えた。

「私は……生活に困っていた。賄賂を受け取れば楽になれると、安易に考えた。封印なんて迷信にすぎないと……だが、あの鬼を目にしてようやくわかった。私が解いたのは、ただの札ではなく、この村を守る “誓い” だったのだと」

蓮が腕を組んで言った。

「金のために村を危険にさらすなんて……先生は自分の欲しか見てなかったんだ」

大地は唇を噛みしめながらも、そっと言葉を添える。

「でも……まだ間に合います。先生が真実を話して、償うなら」

村尾は深くうなずき、三人に向かって手を合わせるように頭を下げた。

創作小説の挿絵

「……すまなかった。本当に、すまなかった」

その時、朝日が山の端から差し込み、坑道の口を金色に照らした。
少年たちは互いに目を見合わせ、胸の奥に静かな達成感を抱いた。

「これで……ひとまずは終わったんだな」悠夜がつぶやく。
「でも、封印はまた守り続けなきゃならない」蓮が真顔で言う。
「俺たちが、だよな」大地が笑った。

三人の笑い声が、朝の空気に吸い込まれていった。