鬼を狩る子孫 第二話 影を落とす契約書(16)
封じられた坑道の闇
翌日、三人は工事現場の奥へと向かった。立入禁止の柵を越え、薄暗い坑道の入口に立つと、ひんやりとした風が顔を撫でた。
悠夜は背負ったランタンを点け、仲間に向かって小さく頷く。
「ここが契約書に記されていた場所だな」
蓮は手帳を開き、昨夜まとめた情報を確かめる。
「過去にこの坑道で事故が相次いだ。遺体の一部が見つからず、以来ずっと封鎖されていたらしい」
大地は無言で前に出て、地面に残る古い足跡を指さした。
「人間じゃない……爪痕が混じってる。かなり奥へ行ったみたいだ」
三人は慎重に足を進めた。坑道の中は湿り気を帯び、天井から滴る水音が響く。岩肌には黒ずんだ染みが広がっており、まるで長い年月、何かが閉じ込められていたかのようだった。
やがて、奥に朽ち果てた木の扉が現れる。錆びた鎖で固く閉ざされていたが、悠夜がランタンをかざすと、鎖の表面に異様な文字が浮かび上がった。

「これ……封印術だ」
悠夜が呟く。
蓮は目を見開いた。
「つまり、ここに “何か” が眠ってるってこと?」
大地は短く答える。
「その “何か” が、今また目を覚まそうとしている」
不気味な静けさが三人を包む。坑道の奥から吹き込む冷気が一層強まり、ランタンの炎が揺れた。
悠夜は仲間の顔を見渡し、決意を込めて言った。
「ここが本当の始まりだ。俺たちの役目は、この封印を見極めること。そして……もしその封印が解けているなら――」
蓮が息を呑み、大地が静かに頷く。
その瞬間、鎖の奥から低いうなり声が響き、岩壁が震えた。
封じられた坑道の闇が、いよいよ牙をむこうとしていた


