鬼を狩る子孫 第二話 影を落とす契約書(15)
黒い箱の謎
放課後の公園。
人気のないベンチに、悠夜、蓮、大地の三人が並んで腰を下ろしていた。足元には、あの夜必死で持ち帰った黒い箱が置かれている。
「……やっと落ち着いて見られるな」
悠夜が小声で言う。
「まるでスパイ映画だよな。俺ら、中学生だぞ?」
蓮が苦笑しつつも、視線は箱に釘付けだった。
大地は唾を飲み込み、手を伸ばした。
カチリ、と錠前を外すと、中から整然とした封筒の束が現れる。

「……領収書?いや、伝票か」
悠夜が目を細めて束を手に取る。
「見ろ、これ。“資材納品証明” って書いてある」
「え、これって……あの現場で使われてる鉄骨とかの?」
蓮が身を乗り出す。
「だろうな。……でも数字が変だ」
悠夜が指でなぞった。
「一トンのはずが〇・五トンに訂正されてる。それに、印鑑も二種類……」
「二重帳簿ってやつか」
大地の声が硬くなる。
「父さん、よく言ってた。“帳簿の数字が食い違ってたら必ず裏がある” って」
「……つまり、資材をごまかして金を抜いてるってこと?」
蓮の顔から冗談っぽさが消えた。
悠夜は黙ってうなずく。
次に取り出したのは、小さなメモ帳だった。走り書きのメモにはこうある。
―― “村尾了承済。次回も同様に処理。”
「……村尾?」
大地が顔を上げる。
「市議の、あの村尾……?」
「ほぼクロだな」
悠夜がつぶやいた。
「この箱、完全に決定打だ」
「でもさ」
蓮が眉をひそめる。
「これ持ってるだけで危険じゃね?あいつらに見つかったら……」
三人は一瞬、黙り込んだ。
遠くで蝉が鳴き始め、夕暮れの空気がざらついている。
「……逃げ回るんじゃなくて、こっちから攻めよう」
悠夜がきっぱり言った。
「どうやって?」
「先生に直接は無理だ。でも、この証拠を “正しく預ける” 方法があるはずだ」
蓮は大きく息を吐いた。
「ったく、もう完全に探偵ごっこじゃなくなってきたな」
「でも、ここで引いたら全部闇に消える」
大地が拳を握る。
三人は互いに視線を交わし、決意を確かめ合った。
その時、風に乗って木の葉が舞い落ちた。
黒い箱の中の封筒が、わずかにめくれて新たな文字がのぞく。
「……これ、“入札仕様書” だ」
悠夜が震える声で読み上げる。
「影を落とす契約書、って……これのことかもしれない」


