鬼を狩る子孫 第二話 影を落とす契約書(14)
危機一髪
懐中電灯の光が、倉庫の壁を這うように近づいてくる。
三人は反射的に資材の陰に身を隠した。
「ど、どうする……?」
蓮が声を震わせながら囁く。
「静かに。動くな」
悠夜が人差し指を口に当てる。
足音はすぐそこまで迫り、鉄の扉がガチャリと開いた。
光の束が部屋の中をぐるりと舐めるように走る。

「くそ、ネコか……」
男の低い声が響いた。
三人の心臓が一斉に跳ね上がる。
「昨日も荒らされたんだ。変なガキが入ってきてねえだろうな」
その言葉に、蓮の顔が真っ青になる。
大地は必死で息を殺し、悠夜は冷静さを装おうとするが、指先が小刻みに震えていた。
光が黒いビニールの箱を照らした。
男は足音を響かせながら近づき、手で箱を押して確かめる。
「……よし。まだ無事か」
その瞬間、蓮の足元から小さな「カラン」という音が響いた。
ポケットに入れていた飴玉が転がり落ちたのだ。
三人は凍りついた。
男がギラリと光を向ける。
「誰だ!」
悠夜が即座に、大地と蓮の肩を叩いた。
「今だ、走れ!」
三人は資材の隙間をすり抜け、扉の外へ飛び出した。
背後で「待て!」という怒鳴り声と、ドタバタとした足音が追ってくる。
だが、フェンスの隙間を抜けると、夜の風が三人を包み込んだ。
路地へ飛び出したところで蓮が振り返り、ぜえぜえ息を切らしながら笑う。
「や、やべぇ……まじで心臓止まるかと思った……」
「お前の飴玉のせいだろ!」
悠夜が怒鳴ると、大地もつられて笑ってしまった。
「でもさ……」
大地が真剣な顔に戻る。
「さっきの男、やっぱり何か隠してる。あの黒い箱、普通の資材じゃない」
三人は夜風に吹かれながら立ち尽くした。
恐怖と興奮がまだ胸に残っている。
「……次は絶対、中身を見てやる」
悠夜の目が暗がりの中で光った。


