鬼を狩る子孫 第二話 影を落とす契約書(13)

資材置き場の影

 トラックの音が遠ざかり、工事現場は再び静けさに包まれた。
 夜風がフェンスを揺らし、カン、と金具が小さく鳴る。

「……で、本当に入るつもり?」
 蓮がごくりと唾を飲み込んだ。

「当たり前だ。せっかくここまで張り込んだんだから」
 悠夜がきっぱり言う。

「悠夜ってさ、こういうときだけ妙に行動力あるよな……」
 蓮はぼやきながらも、靴ひもを結び直している。

 大地がフェンスの隙間を指差した。
「ほら、こっち。工事用に開けてるのか、鍵がかかってない」

 三人は身を低くして中へと滑り込んだ。
 足音を殺しながら、資材置き場へと近づく。

 乱雑に閉じられた扉を前に、悠夜が囁く。
「行くぞ」

 ギィ、と軋む音を立てて扉を開くと、むわっと鉄と木材の混じった匂いが鼻を突いた。
 中には積み上げられた資材の山――だが、その奥に妙なスペースがある。

「……なに、これ」
 蓮が首をかしげる。

 スペースの中央には、大きな黒いビニールに包まれた箱が置かれていた。
 先ほどトラックに積まれていたものと同じ形だ。

「資材っていうより……倉庫の隅に隠してる感じだな」
 大地が眉をひそめる。

「開けてみる?」
 蓮が半分冗談のように言うと、悠夜が真顔でうなずいた。

 そのとき――。
 背後で、砂利を踏む音がした。

 三人は同時に振り返った。

創作小説の挿絵

闇の中、懐中電灯の光がこちらに向かって近づいてくる。