鬼を狩る子孫 第一話 見えない請求書(15)

(15)
図書室の机に並べられた古文書と民俗誌。
その中に、蓮が偶然開いたページに小さな墨絵が描かれていた。

――青白い光を放つ勾玉。
そのまわりで、霧が払われるように影が後ずさっている。

「これ……!」
蓮が思わず指さす。

悠夜は身を乗り出し、文字を追った。
そこには、こう記されていた。

創作小説の挿絵

――《勾玉は霧の守人の証。影との契約を退ける唯一の媒介なり》

二人は顔を見合わせた。
「やっぱり……祠で見つけたあの勾玉だ」
「契約を退ける……ってことは、これで請求を断ち切れるのか?」

だが続きの文には、こうもあった。
――《勾玉を用いるは代償を伴う。持つ者の心に巣食う影を映し出す》

蓮は眉をひそめる。
「代償……か。なんかヤな予感しかしないぞ」

そのとき、勾玉を収めた布袋が机の上でかすかに揺れた。
勝手に口が開き、中の勾玉がころりと転がり出る。
淡い光が図書室を照らし、本の文字がひとりでに浮かび上がった。

――《支払いを止めたければ、己が影を差し出せ》

蓮がごくりと喉を鳴らす。
「……なんだよこれ。影を差し出すって……」

悠夜は勾玉を手に取り、目を閉じた。
すると脳裏に、竹内先生の姿がよぎった。
教壇に立つその背に、黒い影がまとわりついている。
だが、それは先生自身のものというより――依り代として「押しつけられた」影だった。

「……蓮。影を差し出すってのは、たぶん “自分で引き受ける” ってことだ」
「おいおい、そんなの危なすぎるだろ!」

それでも悠夜は拳を固める。
「竹内先生をこのままにしておけない。俺たちで “請求者” との契約を断ち切るんだ」

図書室の時計が、ぼん、と低い音を響かせた。
その瞬間、勾玉が強い光を放ち、窓の外の霧が一斉にざわめいた。

――《次の支払いは、間もなく》