鬼を狩る子孫 第一話 見えない請求書(14)
(14)
次の日。
悠夜と蓮は、放課後の図書室にこもっていた。
「ほら見ろよ、この古い本。ほこりかぶって誰も読んでないけどさ……」
蓮が持ってきたのは、黄ばんだ民俗誌だった。
表紙には「霧村縁起」と墨で書かれている。
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ページをめくると、そこには奇妙な絵があった。
墨で描かれた巻物のようなものに、人々が列を作って印を押している。
上にはこう書かれていた。
――《請求者との契約》
悠夜は息をのむ。
「……やっぱり、昔からあったんだ」
本文には、こう記されていた。
「村は幾度も飢饉や戦に見舞われ、そのたび “請求者” に願をかけた。
願の代価として差し出すのは、人の心の一部――恐れや後悔。
差し出しが滞れば、”請求者” は影となり依り代を求めて人を蝕む」
蓮が顔をしかめる。
「なんだよこれ……。まるで借金取りじゃん!」
「でも……竹内先生が依り代にされたのも、そのせいかもしれない」
悠夜は低い声で言った。
「この学校の空気が重くなってるのも、もしかしたら “支払い” が始まったから……」
蓮は拳を握った。
「ふざけんなっての! 誰がそんな契約したんだよ!」
そのとき、図書室の奥から風が吹いた。
誰も開けていない窓が、ぎい、と音を立てて揺れる。
本棚の影が長く伸び、二人の足元をなぞった。
――《支払いは継承される》
耳ではなく、また頭の奥に響く声。
蓮が肩をすくめる。
「……い、今の聞こえたよな?」
悠夜は静かにうなずいた。
「つまり、“契約” は今も生きていて……俺たちが、次の支払い手に選ばれた」
図書室に再び静寂が戻る。
古い時計の針が、コツコツと音を刻んでいた。
蓮は唇を噛み、そして言った。
「なあ悠夜……だったらさ。俺たちでこの “契約書” 破ってやろうぜ」

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