鬼を狩る子孫 第一話 見えない請求書(13)

(13)
保健室に運ばれた竹内先生は、白いシーツに横たわっていた。
だが眠っているというより、うなされているように体を小刻みに震わせている。

「……請求者……やつらは……」
うわ言のように、同じ言葉を繰り返していた。

蓮が眉をひそめる。
「 “請求者” って、結局なんなんだよ。金でも取られるのか?」
冗談めかして言ったが、その声には不安が混じっていた。

悠夜は先生の枕元に座り、手にした勾玉を握りしめた。
すると勾玉がかすかに震え、白い光を放つ。
光は先生の胸元に吸い込まれ、影のような黒い筋が浮かび上がった。

「……見えるか?」
「な、なにあれ……!」

黒い筋はやがて形を変え、人の顔のような影となった。
それは竹内先生の胸から半ば抜け出すようにして、口を開く。

――《支払いを滞らせるな》

声は耳からではなく、頭の奥に響いた。

創作小説の挿絵

その一言で、教室で見た黒板の文字と同じ冷気が走る。

蓮が思わず叫んだ。
「おい! いったい何を支払えってんだ!」

影はゆっくりと目を細めた。
――《人の心だ。おまえたちの怯えと後悔が、我らの糧となる》

言葉と同時に、保健室の窓ガラスがきしみ、外の空に霧が広がった。
蓮は青ざめながらも必死に声を張る。
「ふざけんな! そんなもん、払えるわけないだろ!」

悠夜は勾玉を胸に掲げた。
「……払わない道を探すしかない。俺たちで」

その瞬間、影は竹内先生の体に引き戻され、部屋は静けさを取り戻した。
ただ、空気は重く冷たいままだった。

蓮は小さく震える声でつぶやいた。
「……心を、支払えって……。なんだよそれ……」

悠夜は窓の外の霧を見据えた。
その先に、まだ見ぬ「請求者」の群れが待っている気がしてならなかった。