俳句的生活(328)-連句(14)-

今回の連句は、4月1日から7日まで、一週間かかって仕舞いましたが、これには訳があって、4月1~6日の間、私が京都と吉野に花見に行っていたことと、更に悪いことにその間持参していたタブレットに不具合が生じてラインが使えず、スマホのSMSで代用せざるを得なくなったことに依っています。

今回の旅行の目的の一つには、関西の連衆の方々と初にお目にかかることがありましたが、(第25句)と(第26句)に詠まれているように、これは京都大学の時計台にある “La tour” というレストランで会食する形で実現しました。その直前に私は吉田山に登っていて、「紅萌ゆる」の碑のある広場に遠足に来ていた吉田神社の幼稚園児から、おはようございます の声をかけられ、幸せな気持ちになっていました。大学は入学式を控え「紅萌祭」というものを催していて、会合はそうした中での事となりました。

連句(14)『須磨坂の巻』
令和7 年 4/1(火)〜4/7(月)
連衆  典子 二宮 游々子 紀子


(発句) 振り向けば翅はたはたと初黄蝶   典子
(脇句) 砂雲の合間青空淡し        二宮
(第三句) 韃靼の海峡下る春告魚      游々子
(第四句) これより続く旅物語       紀子
(第五句) 正座して観瀾亭の月明り     典子
(第六句) 夜寒に波の上に風音       二宮
(第七句) 秋の田は皇尊(すめらみこと)の袖に露  游々子
(第八句) 恋占ひのトランプ切って        典子

(第九句) キャンディーズ歌えばハート出でにけり  紀子
(第十句) ネッカーの岸辺アルト・ハイデルベルグ  游々子

(第十一句) オアシスのサマルカンドで熱気球   二宮
(第十二句) 駱駝に乗りて絹の道行く    典子
(第十三句) 田植唄やみて田上の夏の月    游々子
(第十四句) 遠く聞こえる清流河鹿      二宮
(第十五句) 山の辺の道の古墳に思ひ馳せ  典子
(第十六句) 自転車を漕ぐ小栗街道      紀子
(第十七句) 一片
の落花を見ずに静かなる  游々子
(第十八句) 疎水に沿いて哲学の道      二宮
(第十九句) 路地小路道に迷うて旅日永    紀子
(第二十句) 宿は何処か小さき浴槽      游々子
(第二十一句)下駄を履き母恵夢一六タルト買ひ  紀子
(第二十二句)ひと息ついて小さく夢見   二宮
(第二十三句)アフリカの最高
峰に積もる雪 游々子
(第二十四句)白き息して珈琲を飲む     典子
(第二十五句)時計台下のフレンチレストラン 紀子
(第二十六句)紅萌祭の真っただ中で     游々子
(第二十七句)金もなし恋も知らずに左京住む 二宮
(第二十八句)突然受くる転勤辞令       典子
(第二十九句)仲麻呂の詠みし月かと又
思ひ  紀子
 
(第三十句) 神鹿の鳴く秋の夕暮れ      游々子
(第三十一句)奉納と書かれし樽の今年酒    典子
(第三十二句)余花朗亭に聞く浪の音      紀子

(第三十三句)魚住の住吉神社淡路見る     二宮
(第三十四句)大橋潜る白き客船        典子
(第三十五句)桜見て須磨坂登るケーブルカー 二宮
(挙句) 波は穏やか風は麗らか        紀子

(発句) 振り向けば翅はたはたと初黄蝶   典子

季語「初蝶」の発句で始まりました。

(脇句) 砂雲の合間青空淡し        二宮

黄蝶の「黄」より脇句では黄砂を連想し、それを砂雲と詠んでいます。

(第三句) 韃靼の海峡下る春告魚      游々子

3句の韃靼とはモンゴルのことで、韃靼海峡(間宮海峡)を春告魚と呼ばれるニシンが下って行きます。

(第四句) これより続く旅物語       紀子

4句は春告魚の旅の始まり。4月初めであることより新しい人生の門出を迎えた人たちの姿を連想させます。

(第五句) 正座して観瀾亭の月明り     典子

5句の観瀾亭とは仙台伊達藩の松島にある月見御殿、旅でここまで飛んで来ました。

(第六句) 夜寒に波の上に風音       二宮

6句はその御殿の夜寒の描写。

(第七句) 秋の田は皇尊(すめらみこと)の袖に露  游々子

7句は夜寒より百人一首の天智天皇の御歌をイメージ。

(第八句) 恋占ひのトランプ切って        典子

8句は花札よりトランプへ。

(第九句) キャンディーズ歌えばハート出でにけり  紀子

9句はキャンディーズの恋の歌。

(第十句) ネッカーの岸辺アルト・ハイデルベルグ  游々子

10句はキャンディーズに小説アルト・ハイデルブルグに登場する女性ケーティを準えたもの。

(第十一句) オアシスのサマルカンドで熱気球   二宮

11句はドイツの古都からシルクロードのオアシス古都へ場所移し。

(第十二句) 駱駝に乗りて絹の道行く    典子

12句はシルクロードの駱駝。

(第十三句) 田植唄やみて田上の夏の月    游々子

13句は乾燥地帯から湿潤の日本への場所移し。昔の田植唄の句はこちらに紹介しています。
(第十四句) 遠く聞こえる清流河鹿      二宮
(第十五句) 山の辺の道の古墳に思ひ馳せ  典子
(第十六句) 自転車を漕ぐ小栗街道      紀子
(第十七句) 一片
の落花を見ずに静かなる  游々子
(第十八句) 疎水に沿いて哲学の道      二宮
(第十九句) 路地小路道に迷うて旅日永    紀子
(第二十句) 宿は何処か小さき浴槽      游々子
(第二十一句)下駄を履き母恵夢一六タルト買ひ  紀子
(第二十二句)ひと息ついて小さく夢見   二宮
(第二十三句)アフリカの最高
峰に積もる雪 游々子
(第二十四句)白き息して珈琲を飲む     典子
(第二十五句)時計台下のフレンチレストラン 紀子
(第二十六句)紅萌祭の真っただ中で     游々子
(第二十七句)金もなし恋も知らずに左京住む 二宮
(第二十八句)突然受くる転勤辞令       典子
(第二十九句)仲麻呂の詠みし月かと又
思ひ  紀子 
(第三十句) 神鹿の鳴く秋の夕暮れ      游々子
(第三十一句)奉納と書かれし樽の今年酒    典子
(第三十二句)余花朗亭に聞く浪の音      紀子
(第三十三句)魚住の住吉神社淡路見る     二宮
(第三十四句)大橋潜る白き客船        典子
(第三十五句)桜見て須磨坂登るケーブルカー 二宮
(挙句) 波は穏やか風は麗らか        紀子

本連句(14)について、チヤットGPTに評価を訊ねたところ、次のようなコメントがありました。

全体構成のバランス

  1. 季節・恋・雑のバランス
    • この連句には、季節を感じさせる句(春告魚、月明り、田植唄など)や、旅行・風景に関する句(ネッカー、オアシス、駱駝など)、さらに恋に関する句(恋占ひ、ハート出でにけり)も含まれており、季節感やテーマが豊かです。
    • 恋句が第8句に挿入され、連句の前半に恋を登場させることで、後半に続く自然や旅行の流れと調和しています。特に第9句「キャンディーズ歌えばハート出でにけり」のリズム感が、少し遊び心を加えている点がユニークで、連句の進行にスパイスを加えています。
    • 序破急の構成
    • 序(序章): 発句から第6句まで、静かな、または旅行の始まりを感じさせる風景が多く、穏やかな調子でスタートします。特に発句の「振り向けば翅はたはたと初黄蝶」や、第5句「正座して観瀾亭の月明り」などは静かで情緒豊か。
    • 破(展開): 第7句から第16句あたりまでは、旅行の場面や自然に関する句が続き、スムーズに物語が展開します。ここでは「キャンディーズ」「ネッカーの岸辺」など、比較的現代的な要素が加わることで、前半の静けさと対照的なダイナミズムが出てきます。
    • 急(結末): 第17句から最後にかけては、急に現代的な事象(転勤辞令、恋の句)もありつつ、最終的に穏やかな結び「波は穏やか風は麗らか」に収束しています。この流れは自然で、連句の流れにおいても調和しています。

句数と題材の適正

月・花の定座

  • 月の句(第5句「正座して観瀾亭の月明り」)はしっかりと挿入されています。季節感が伝わる句で、月の美しさをうまく表現しています。
  • 花の句は特に目立ったものはありませんが、花がなくても旅行や自然の美しさが表現されており、十分にバランスが取れています。

恋・旅・神祇・釈教などの配分

  • に関する句が第8句に登場し、連句全体の雰囲気を和らげ、楽しさを加えています。恋の句は後半(第9句)に挿入されており、問題なく配置されています。
  • に関する句(ネッカー、オアシス、駱駝など)は適切に配置されています。特に旅行をテーマにした句が多く、全体的に移動や発見、発展のイメージが強いです。
  • 神祇・釈教に関しては、この連句には特に目立ったものはなく、主に自然や風景、現代的なテーマに焦点が当たっています。

付け(連なり)の技法

  1. 匂付・縁付・躍付の適切さ
    • 匂付縁付が自然に見受けられます。たとえば、発句の「初黄蝶」がその後の「砂雲の合間青空」や「春告魚」へと季節をつなげている感じがよい流れを作り出しています。
    • 躍付に関しては、第8句「恋占ひのトランプ切って」や、第9句「キャンディーズ歌えばハート出でにけり」に見られるように、少し意外性のある切り替えが、全体のリズムにダイナミズムを与えています。
  2. 前句との自然なつながり
  3. 例えば、第15句「山の辺の道の古墳に思ひ馳せ」から第16句「自転車を漕ぐ小栗街道」への自然な移行があります。この「道」や「道を進む」というテーマが連続しており、スムーズに次の句へと繋がっています。
  4. 式目違反の有無
  5. 初六句に恋・神祇・釈教などが入っていないか
    • 恋句は第8句に来ており、初六句に入っていないので問題ありません。
    • 神祇・釈教も登場していないため、この点も問題なしです。
  6. 同語反復や対句、物の重なりなどの禁止事項
    • 同語反復や対句などは特に見受けられません。全体として、句同士が重なりすぎず、リズム感と内容にバリエーションを持たせています。

まとめ

この連句は、全体的に非常に調和が取れており、旅行をテーマにした旅情感と季節感がしっかりと表現されています。現代的な要素(キャンディーズや転勤辞令など)も、伝統的な連句の枠組みにうまく収まっています。

式目の観点からも完璧に近いと言える内容で、特に序破急恋句の配置旅行に関する句などが適切に組み合わさっており、遊び心や意外性もありながらも、連句としての秩序は守られています。

強いて言うならば、もう少し神祇や釈教に関する句があれば、伝統的な形式により近づくことができたかもしれませんが、これは現代的な連句なので問題にはなりません。

全体的にとても美しく、調和の取れた連句です!