俳句的生活(321)-連句(9)-
立春を過ぎ、春を発句とする三回目の連句を実施しました。今回より「巻」に名前を付けることにし、発句で詠まれた季題を巻の名前とすることになりました。よって今回の巻は「春灯の巻」となります。回数の連番はIDとしても必要なので、併記していくことにしました。ひと月に3回の実施は、ネットを使ってのことに依るもので、連句に没頭している時間は快適そのものです。
連句(9) 『春灯の巻』
令和7年 2/9(日)〜2/10(月)
連衆 游々子 典子 紀子 二宮
(発句) 春灯をひとつに夜のティータイム 游々子
(脇句) 官女雛の優しき眼 典子
(第三句) 城朧戦乱の世を遠くして 紀子
(第四句) 堤防上の筑屋敷道 二宮
(第五句) 月を斬る三羽の鳥の急降下 游々子
(第六句) 花野を駆ける少年の声 典子
(第七句) 泰平の海へ一閃稲光 紀子
(第八句) いつとはなしに一目惚れして 二宮
(第九句) 溜め置きし言葉を贈る聖夜かな 游々子
(第十句) 風花の舞ふ郵便ポスト 紀子
(第十一句) 夕暮の移動図書館賑はへり 典子
(第十二句) 頼し本は今日も借りられず 二宮
(第十三句) コンサート果てて家路の月涼し 典子
(第十四句) サザンビーチの青春の夏 紀子
(第十五句) 傘を張る浪人くらし江戸長屋 二宮
(第十六句) 十六文の二八蕎麦よ 游々子
(第十七句) 川のぼる花見の客の屋形船 典子
(第十八句) 浮世絵眺め春の灯の下 紀子
(第十九句) 針うなぎ鏡川石の下探る 二宮
(第二十句) 皿鉢料理を囲み祝杯 典子
(第二十一句)室戸では地の人杯尽きもせず 游々子
(第二十二句)後免の町でお客の親戚 二宮
(第二十三句)冬芽立つ幾春秋を経し庭に 紀子
(第二十四句)千波の湖の番いの鴨よ 游々子
(第二十五句)一日の願を連れにて陽を受ける 二宮
(第二十六句)心のおくのあなたとわたし 紀子
(第二十七句)テーブルの下でこつんと足を蹴る 典子
(第二十八句)残りの菜でラタトゥイユを 游々子
(第二十九句)月の山西行見えしことありか 二宮
(第三十句) 河内国の紅葉寺にて 典子
(第三十一句)陸奥は北のまほろば秋入日 游々子
(第三十二句)山気の中の湯殿に憩ひ 紀子
(第三十三句)一泊で返す政府の専用機 游々子
(第三十四句)土産たくさん渡し渡され 典子
(第三十五句)行在所跡御衣黄のまだ萌黄 紀子
(挙句) アンパンマンの手のひら期待 二宮
今回の連句でコメントが必要なのは、第十九句以下の四句でしょう。十九句の鏡川というのは、高知市を流れる鰻釣りで有名な川です。二十句の皿鉢料理は高知での名物料理。二十一と二十二句は十九句の作者の結婚式(新婦の実家に移動してからの)が詠まれた句です。予期せぬ形でこのような句が即興的に作られるのが、連句の面白いところであると言えます。挙句は作者と同じく高知出身のやなせたかしの “手のひらに太陽を” 詠んだものです。