添削(42)ー厚木若鮎会(6) 令和5年1月ー

鮎の塩焼き

兼題: 小正月、水仙、当季雑詠

磯崎とよこ

原句 うさぎはね我も跳びたし小正月

兎年の躍動感を詠もうとした句ですが、「我も跳びたし」と言わずに、その気持ちが出る表現をしてみましょう。

参考例 調理場の水の跳ねるや小正月


原句 土手いっぱいそろってダンス水仙花

上句、中句、下句が全て体言止めになっていて、ぶつぶつ切れた感じがします。

参考例 水仙花土手いっぱいのダンスかな


原句 茜雲山茶花の道子ら走る

山茶花

上句「茜雲」より、夕方になったので子供らが遊びから家に走って帰ることを詠んだものと解釈できますが、それであれば上五を茜雲と色彩を強調するのではなく、時刻が過ぎていることを示す表現にした方がフィットします。

参考例 夕暮れて山茶花の道子ら走る


岩崎浩子

原句 賑やかに子供の声が小正月

小正月という季語を引き立てるために、賑やかな子供の声を添えた句ですが、「賑やか」が平凡(説明的)な言葉となっています。

参考例 従兄らと戯る吾子や小正月


原句 路地に咲く水仙の花美しき

水仙

この句の問題点は二つあります。一つは「咲く」で、花は咲くものですから、このような動詞は不要です。もう一つは「美しき」で、直接形容詞を使って花の美しさを表現しようとすると散文的となり、俳句は奥行きののないものになってしまいます。

参考例 路地裏にただ一輪の水仙花


原句 ダンスする冬の帰り道暖まる

「冬」を季語として使う場合、冬と組み合わせた言葉で、強い映像を伴わせないと、季語の力が効いてきません。この句の「冬の帰り道」では、季語としての力が出ていないのです。「冬○○」という形で、映像の強いものを構成し、他の12音でその季語を引き立てるようにすると俳句らしくなります。

参考例 ダンスして心もホット冬夕焼


鈴木紀子

原句 狭き門合格念じて小正月

神社

神社かどこかで合格祈念したという句ですが、ただそれだけを述べたのでは、俳句にはなりません。

参考例 賽銭の音や祈念の小正月


原句 閉める戸に水仙揺れる反抗期

季語が水仙なので、それを強調できる場所に置くのが良いです。「水仙揺れる」で一度カットを切って、次にズームをガシャと閉められた「戸」に移動させるのが良いでしょう。

参考例 水仙揺れる十四の吾子の閉める戸に


原句 年毎に粒のごとくの雑煮餅

年毎に小さくなっていく雑煮餅に「あ~あ」と感じ入っている気持ちが出るよう、「けり」で詠嘆してみてはどうでしょうか。

参考例 雑煮餅年ごと小さくなりにけり