添削(38)-厚木若鮎会(4) 令和4年11月ー
兼題: 七五三、茸、当季雑詠
渡辺喜美子さん
原句 お祝いのおすそ分けにと千歳飴
ほのぼのとした情景が浮かぶ佳句です。お祝いと言わなくても千歳飴から分かりますので、別の事を言った方が、インパクトが強くなるでしょう。
参考例 成長のおすそ分けにと千歳飴
原句 女子会や持ち寄り参加茸鍋
この句も情景のよく見える佳句です。ただ、中七の「持ち寄り参加」が散文的で緩んだ感じがします。参加していることは明らかなので、この言葉は不要です。
参考例 それぞれに茸持ち寄る女子の会
原句 樟脳の仄かに匂ひ冬衣
「仄かに」が副詞ですので、次に続く言葉は動詞でなければなりません。
参考例 樟脳の仄かに匂ふ冬衣
岩崎浩子さん
原句 七五三昔し懐し思い出す
中七下五が説明文になっていますので、映像を伴わせて、昔を懐かしんでいることを言葉にしなければ俳句になりません。
参考例 われ母でありし写真や七五三
原句 茸たち鍋に並べて湯気が立つ
鍋には湯気は立つものですし、素材は鍋に並べるものですから、この二つの動詞は使わずに、句を作ることを考えましょう。
参考例 一盛の茸山菜囲炉裏鍋
原句 すすきの穂咲き乱れて景色よし
「景色よし」という言葉を使わずに、よい景色を詠んでみましょう。
参考例 芒野は穂咲き乱る日暮かな
鈴木紀子さん
原句 嫌嫌期晴れ着蹴飛ばし千歳飴
嫌々期だから晴れ着を蹴飛ばすという、原因と結果の語順になっています。俳句ではそれは嫌われているので、一工夫してみましょう。
参考例 晴れ着をば蹴飛ばす男の子千歳飴
原句 舞茸の赤だし香る暗き路
下五の「暗き路」と上五中七との関係がよく分かりません。家の中での食事としてみましょう。平凡ですが、
参考例 舞茸の赤だし香る今朝の膳
原句 肉球を冷たき床にそっと出し
「肉球」とはネコの足裏の盛り上がった部分です。季語は「冷たし」。ネコをそっと冷たい床に出したという句です。「猫」と言わずに、「肉球」としたところに、この句の工夫があります。このまま直しは無しです。
経澤初美さん
原句 凛々しさも数分なりし七五三
中七の語尾に「し」が付いて過去形になっていますが、「し」を削って現在形にした方が臨場感が増すと思います。
参考例 凛々しさも十五分なり七五三
こうすると、一茶の「うれしさも中くらいなりおらが春」の句と類似のリズム感が出て来ます。
原句 病食の「ううう」と熱き茸汁
「ううう」が適切なのかどうか、疑問です。普通は「あつつ」です。
参考例 病食の「あつつ」と湯気の茸汁
原句 小春日や手で足庇ひ一千歩
句末が名詞で終わっていますから、その前の動詞は連体形にした方が良いです。
参考例 小春日や手で足庇ふ一千歩