写真で見るプレバト俳句添削(37)-(8月18日#1)ー

今回より前半は才能有りだけを取り上げることにしました。夏井さんのシビアなコメントは面白いのですが、凡人・才能無しの句は着想が悪く、夏井さんの添削によっても良句にならず、我々の俳句の足しにならないと判断したからです。

今回は才能有りが二人いて、丁度良い分量となりました。お題はサービスエリアです。

サービスエリアプレバト俳句添削


妻を待ち静かな月のサンルーフ  とろサーモン村田 才能有り2位 72点

サンルーフプレバト俳句添削

村田さん: 最近結婚した。妻と出かけることが多い。サービスエリアで妻が買い物行っている間に休憩した時、サンルーフから見える月が綺麗だった。

志らくさん: サンルーフというだけで車だという事が分かる。妻が何してるんだろうと。”トイレ?” ”買い物?” 色んなものに想像が広まるから、とてもいい句です。

夏井さん: とても静かで美しい時間が描かれていると思います。丁寧に見て行くと、先ず妻という人物が出て来ますね。妻という人物が出て来ているということは、その向こうに夫の存在もさらっと匂わしている訳ですね。そして ”待つ” という動作が出て来ます。ここにささやかな時間というのがあると、それも書けているんですね。それに ”静かな” が月の表情でありつつ、妻を待っている時間を過ごしている静かなサンルーフでもある。それぞれの言葉がきちんといい場所に置かれていて、語順も上手と思いますし、無理がないですよね。あなたもこれからの家族との時間を、写真だけでなく俳句で記録なさったら良いと思います。

游々子: 夏井さんの ”静かな” についての鑑賞は流石です。妻や夫、妣のような家族をテーマにするとベタな感じになりますが(特に我々の世代では追想になるので)、この句は妻に対して ”待つ” という行為となっているので、ベタつきが全くない秀句となっています。


アクセルを開くや鉄馬月に咆え  的場浩司 才能有り1位 73点

 

単車プレバト俳句添削

的場さん: これはもう若い頃に単車に乗ってた時をそのまま書いたんですけど、鉄馬というのは風鈴の別名みたいで、単車乗る人は自分の単車を鉄馬とか鉄の馬って呼ぶことがあるので、あとはそのままですね。夏の夜みんなで集まってツーリング、、

浜田さん: 何でそんな事すんの?
的場さん: はあ? 何がですか?
浜田さん: みんな集まって何でそんな事すんの?
的場さん: ツーリングですから
浜田さん: ツーリングて、どうせ音バンバン流している訳やんか。寝てる人もおる訳やし、後ろから赤いランプの奴に追いかけられる
的場さん: それはあなたでしょ!

夏井さん: これは表現したいことが、表現したいようにちゃんと書けている句ですね。問題になるのは将にこの ”鉄馬” という言葉なのですが、意味がいくつかあるんです。「鉄で作った馬」それから「本物の馬に鎧をつけた軍馬」「風鈴の別名」と色々ある訳です。じゃあこれをバイクと思わせる仕掛けが必要なんですね。それが前半でちゃんと出来ているんです。四輪なら ”アクセルを踏む” が一般的だけど、”開く” でこれはバイクに違いないと。”や” で将に今ふかしているという感じですね。そして最期の ”月に咆え” がかっこいいですね。萩原朔太郎に ”月に咆ゆ” という詩集があるんですけど、それをちょっと思わせて、一瞬知性が匂うんです。そして「月」という季語に対して、鉄馬という冷たい感触も良いと思います。鉄の馬の勇ましさ・感触・馬に跨っている様子とか、全部入って来るんですね。見事なものですよ、これは。

浜田さん: 先生、的場これで才能有り4回目なんですけど、どうですか?

夏井さん: ここまで出来るんなら、特待生でもやっていける。

浜田さん: 的場浩司、特待生~!

游々子: 人騒がせな内容のものでも、詩になるものですね。私は、”月に咆ゆ” を使って「月に咆ゆ我が青春の資本論」という句を作ったことがあります。中国共産党の人と、”共産主義とは何か” について議論できる機会があればと思っています。