写真で見るプレバト俳句(34)ー添削(7月28日#2)ー

後半は1ランク上の査定です。出場者はキスマイ千賀(名人6段)、志らく(名人6段)、フルーツポンチ村上(永世名人)の3人です。

旱星(ひでりぼし)水槽のグーッピー揺れる  キスマイ千賀

旱星とは、7~8月の南の夜空に赤く輝く星のことで、代表的なものに、さそり座のアンタレスという一等星があります。夏(晩夏)の季語となっています。

旱星プレバト俳句添削

アンタレス(ヨーロッパ南天文台で観測されたもの) (Wikipediaより)

千賀さん: 水族館から家で飼う熱帯魚に発想を飛ばしました。グッピーを見るとゆっくり揺れている。その寂しさを表現しました。

夏井さん: この句のポイントは「旱星」と「水槽のグッピー」の取り合わせの是非です。

浜田さん: 1ランク昇格! 先生から「対比の工夫が見事」

夏井さん: 先ずこの旱星という季語ですね。赤くて熱い夏の星、夜も暑さが下がってない、そんな感じですね。そして、ここに水槽が出てくる訳ですから、当然熱い冷たいの対比をさせようとしている。これは判り易い感じですね。このグッピーと旱星とが、あたかも密かに交信しているかのような、そういう光景を描きたかったんじゃないかと、そういう印象を持ちました。それから、最後の「揺れる」というところに、描写が効いてくる。千賀さんは今まで、一杯詰め込みたがったけど、やっと17音に盛れる分量と、言葉の質量が分ってきたのではないかと、感心しています。

游々子: 原句は五七五になっていないことで、失格です。どうしてこのように破調にしてしまうのか。一般の我々の句会で破調の句が出てくることはほとんどないのに、どうしてプレバトでは、かくも多くの破調の句が現れるのか? ひとえに、夏井さんへの忖度であるとしか思えません。俳句は17音の詩であると言われていますが、それは五七五を足した結果でのことであって、17音であれば詩的なリズム感があるというものではありません。破調の句を作る人に、是非説明してもらいたいことは、何故あなた方は、それでも17音に拘るのかということです。この句も、五七五で表現することは、いとも容易いです。私なら「水槽のグッピー揺るや旱星」と致します。


油照りナポレオンフィシュの旦那  志らく

ナポレオンフィッシュプレバト俳句添削

ナポレオンフィッシュ  (wikipediaより)

志らくさん: 物凄い暑い日に、ふと水族館に入って、ナポレオンフィッシュの雄大な泳ぎを見たら、何かこう涼やかな金持ちの旦那が、「よっ!」と来たような、そんなイメージが私の中に浮かんだので、ちょっと冒険してみました。

村上さん: ”油照り” という季語を選択したことの是非ですね。
千賀さん: 中七の ”ナポレオンフィッシュ” この言葉を選んだ是非ですね。

夏井さん: ”油照り” と ”ナポレオンフィッシュ” の取り合わせの是非です!

浜田さん: 現状維持! 先生から「外? 中? どっちなの?」

夏井さん: 油照りという季語から始まりますよね。そうしたらみんな炎天下、自分がそこに立っていると思うわけです。でそれはさっきの千賀さんの、旱星の句と作りとしては一緒なんです。ただ、千賀さんの句は水槽という1クッションがありましたね。ところがこの句は、油照りのあと、ナポレオンフィッシュがドーンと出てくるので、まるで生身の魚が投げ出されているかのような、そんな印象になってしまう。更にフィッシュの旦那とくるので、これ全体が誰かの比喩かも知れないなと、ここのところがちょっと不親切なんです。”ナポレオンフィッシュの旦那” という言い方は、俳諧味・滑稽味があって、これはこれで面白いと思うのですが、ただ、こっちを活かす季語は凄く難しいと思います。私もずっと考えてるのだけど、なかなか思いつかない。今お話を聞いてみて、暑い中から水族館に入ってナポレオンフィッシュと対面する、そんな感じですね。だとしたら少しだけ出来るかも知れません。

添削 我が汗の鼻先にナポレオンフィッシュ

目の前に水槽がいきなり現れる、という効果はひと先ず作れます。でもあなたの目的とは違うので、いつかこれも達成できる日が来たらいいなと思っています。

浜田さん: 志らくさん、どうですか?
志らくさん: 先生が見付からないと言っているのに、見付けられる訳がない!

游々子: 簡単なことです。私なら「ナポレオンフィッシュの旦那涼やかに」と致します。


咆えたけるアシカのミリア夏の雲  フルポン村上

イルカショウプレバト俳句添削

アシカショー  (しながわ水族館より)

村上さんのシュレダー率は100% 句集発行まで28句となっています。

村上さん: 実際に水族館に行って、アシカショーを見て作りました。”咆えたける” と ”夏の雲” の生命力は合うのではないかと。

浜田さん: 掲載決定! 先生から「カメラワークが巧み」

夏井さん: 流石ですね、これは。語順とかよく考えています。先ず声から出てくる、何が何のために咆えているのか、一瞬思うわけです。そするとアシカが出て来て、どんな声かはアシカの声を聞いたことのある人にはリアルに脳の中で再生される。そしてミリアですよね、名前があるアシカというのはそこで飼育されているものだということが、ここで分かる訳です。アシカショーの光景がありありと出てくる。そしてそこからの遠近感・奥行きの作り方、ミリアに焦点を当てて、背後のこっちが主役ですよと、”夏の雲” をドーンと映すわけですよね。これが永世名人の句です。

游々子: 季語が主役というのは夏井さんの持論ですが、この句の場合、どう考えてみても季語以外の12音がイメージの中心です。季語は添え物でしかありません。私は季語というのはそんなものであって、充分に役目を果たしているものと思っています。志らくさんの句の添削の汗、こんなもので主役といってよいものでしょうか?