写真で見るプレバト俳句(33)-添削(7月28日#1)ー

タイトル戦が終了し、新たな回が始まりました。今回のお題は「水族館」で、前半の出場者は、ゆうちゃみ、平野ノラ、武田真治、河井ゆずるの4人です。「本物が来ましたよ」とは夏井さんの予告コメントです。

炎天や最前列のイルカショー  ゆうちゃみ 才能有り2位 70点

イルカショープレバト俳句添削

(品川水族館より)

ゆうちゃみ: 最前列やったら、イルカショーだと水しぶきが凄くかかってくるんですね。それをパアッーていうイルカと、”炎天や” という季語も入れて真剣に作りました。

村上さん: 最前列ということで、水しぶきが見えてくる。そこに座りたいという気持ちも。

夏井さん:これ、的確な言葉でちゃんと状況書けてますね。「最前列」で状況はちゃんと分る。そして「イルカショー」が出てきた瞬間に、将にね、歓声とか水しぶきが読み手に向かってくるような明るさがありますね。ここまで書けたら、上等!

游々子: 1位の句が、”本物” ということですので、この句との差を見るのが楽しみです。


さらば夏イルカも君も泡と消え  平野ノラ 凡人3位 50点

平野さん: 20歳代に好きだった人とイルカショー見に行ったんですけど、イルカがパアッーと飛んで水面に消えていく。その儚さと同じように、彼も私から消えて行ったんですよ。その泡となる瞬間を完璧に閉じ込めました!

さらば夏の日プレバト俳句添削

フランス映画「さらば夏の日」 (フィルムマークスより)

夏井さん: 気持ちはよく分かります。詩歌の世界で、”君” は恋愛の対象を指す訳ですね。ただ全体読んだ時に、イメージで終わっている。ではどうするかという事ですが、「さらば夏」とやって一番損なのは、イルカと一番大切な君とを、同等に並列に並べていると。ここがちょっと悲しいでしょうかね。並列の相手を代えてみましょう。

添削 さらば夏の恋よイルカよ泡と消ゆ

こうすると、「イルカ」と「夏の恋」が並列になるので、露骨に君をイルカ扱いせずに済みます。

游々子: 二つの「よ」で並列に並べるのは、技巧臭が強く、さらに「さらば」という元気良い言葉で宣言するのは、音楽でいえばトランペットで高らかに鳴り響かせているようで、句意にはそぐわないと思います。私ならすらっと「夏の恋泡と消えゆくイルカショー」と致します。中七の ”泡と消えゆく” が、上五と下五の両方に掛かっていて、平野さんが言いたかったことは言えていると思います。夏井さんが多用する「よ」は、私の好みではありません。


黄金色はずむ岬に秋近し  武田真治 最下位 30点

武田さん: 僕の故郷、北海道にはですね、天然の水族館といわれる美国(びくに)黄金岬という美しい岬があるんです。そこで旧友と会い、語らい、話もはずみ、魚の跳ね、はずみ、黄金色の景色に包まれていると、秋が近づいてるのを感じるものだなあと。

美国黄金岬プレバト俳句添削

美国黄金岬 (どっこい積丹より)

志らくさん: 「はずむ岬に」が、今の話を聞かないと、何がはずんだのか分からない。
武田さん: 余白なんだけどなあ!

夏井さん: これは上五中七の描写がゆるくて、結局何をいいたいのかが明確でないというタイプ。本人の話を聞いて、だから ”はずむ” と書きたかったのね、というところまでは理解致しました。で理解したとして「秋近し」という季語は本当にもう添え物という感じにはなりますね。今、あなたの話をお聞きして、あなたの故郷のそのお名前、凄く素敵じゃないですか。

武田さん: はい、美国黄金岬

夏井さん: どんな字書くんですか?

武田さん: 美しい国、黄金の岬です。

夏井さん: いいじゃないですか。故郷好きならそれを書いた方が良いと思います。

添削 秋近き美国黄金岬にて

下五で余韻を持たせる、余白ですね。岬に佇んで周りをずっと堪能しているに違いないと。ここの余白であなたは勝手に、酒を飲んだり、魚食ったり、同級生と遊んだりすればよいと。

浜田さん: 直されて武田くん、どうですか?
武田さん: これ迷ったんですね。
浜田さん: 嘘つくな! 美国岬なんて一切出て来てないやんか!

游々子: 下五の「にて」は、ただそこに居るということだけを表現しているのであって、余白として読者に想像を掻き立てるものにはなっていません。これが余白ということで、俳句が成立しているというのは、安易過ぎます。この添削は、ただ固有名詞を添えただけのものでしかありません。


夏の空シャチの耳骨(じこつ)に響く笛  河井ゆずる 才能有り1位 73点

シャチ耳骨プレバト俳句添削

(ukogoterより)

河井さん: シャチとかイルカは、音をあごで感じて耳に伝えてるみたいで、夏の暑い日、満員のお客さんの中、パートナーの笛が響いて、それでシャチが弾んでるというイメージで。

夏井さん: あなたが本物だった! それも驚いていますけど。

河井さん: それどういう意味?

夏井さん: 隣の人(相方の稲田、かって「春粉がリュックの色に顔染めて」で才能無し5点)の印象が強くて。

夏井さん: 夏の大きい明るい空が先ずあって、シャチが出て来て、「耳骨」という小さい私たちの目には見えない物に一回持っていってから、響く笛と最後に笛を持って来る訳ですよね。シャチにとって、骨を伝わって聴こえる音、私たちが自分の耳に、空気を伝わって聴こえる笛の音。見えない音と見える音が、ちゃんと二つ綺麗に入る訳ですよね。そして、響くのあとに笛が出てきた瞬間に、シャチの水しぶき、お客さんの歓声、そういったものがちゃんと届く。更に水しぶきの向こうに、夏の空がもう一回見えてくるような、笛が響き渡りますからね。ここを「や」にしていれば、もっと点数が上がった。「夏空やシャチの耳骨に響く笛」。いい人見付けたと、今日私はご機嫌です。

游々子: 確かに、才能有り2位の句と比べて、繊細さの度合いが格段に違っています。”最前列” と ”耳骨に響く笛” との違いです。夏井さんの鑑賞は的確です。