写真で見るプレバト俳句添削(32)ー7月21日 炎帝戦(3)ー

4位 東国原英夫 羽蟻わく今宵ロマンス詐欺メール

羽蟻プレバト俳句添削

東国原さん: 犬山さんに負けるというの、許せないわ。
羽蟻というのは、羽を持ったアリやシロアリみたいな、家をバーっと浸食するような。ネットではいかがわしいメールとか、デートメールとか、出会い系のメールとかそういうのがワーっと湧いている。寂しい感情、恋愛感情を持っている人の隙間にワーっと入ってくるような詐欺メール、そういうことを描きたかった。

浜田さん: 犬山さん、どうですか?
犬山さん: 私のところにも、ロマンス詐欺メール届くんで、なんかあのちょっとうざったい感じ。でも心に届く感じが。私には良いなと思いました。
東国原さん: もう結構です!
梅沢さん: ちょっと大げさだったんじゃないですかね。

夏井さん: 将に大げさで、少々やりすぎ感もあるんです。でも、この内容ですから、ここまでやらないとバランスが取れませんから、思い切ってやるしかないわけです。そしてこの「わく」という動詞、将に今宵人の知らない間に、密やかに家の中を食い始める羽蟻がいる、そして将に今宵ロマンス詐欺メールが知らぬ間に、食い尽くすように忍び寄って来る。”わく今宵” とちゃんと押さえる、これはこれで上手いし、面白かったですよ。

游々子: 羽蟻と詐欺メールとの取り合わせは、現代の世相を反映した句で、面白いと思います。花鳥諷詠からは、思いつかない着想です。


5位 藤モン アルパカを返す手配り雲の峰

アルパカ、プレバト俳句添削

藤モン: よく動物番組で、タレントさんがアルパカと生活して、ロケが終わる間際の時にも、スタッフさんが動物のプロダクションに返す手配をしている、という俳句です。

ジュニア: これは藤モンにしか詠めない、いいですね~ 上五「タピオカ」、、
藤モン: 好きやな~! 全然ちゃうやん。
ジュニア: これはなかなか出ない。
藤もん: 「カ」だけやん。

夏井さん: アルパカという生き物と、雲の峰を取り合わせた句は、私は時折眼にはするんです。ただ、中七ここにオリジナリティがあるんですかね。アルパカを返す手配って一体何だろうと? と読み手は色々想像し始める。映画・テレビとかの現場で返す、その背後に夏の入道雲・雲の峰がモクモクとあると。そして今回のテーマはこの手配りというところで、あっ、ここでメール・携帯を使って連絡を取り合っている、そこは想像できる。

游々子: ”アルパカを返す” というテーマは、以前、東国原さんの句で見た記憶があります。


9位 梅沢富美男 月見草文箱の底に出さぬ文

梅沢さん: 9位かい!

東国原さん: 句集でもボツだったと思いますよ。月見草、梅沢さんにしては平凡だったかな。

夏井さん: 褒めるべきは月見草という季語を選んだことで、「どういう文か?」を想像させる。夜の密やかな感じ、というのでしょうかね。朝になったら萎んでしまう、という花ですから。手紙の内容も恋心のようなものを書いた、迷って出さないままでいると。そういうところは似合ってます。そこは褒めてよい。ただ、出さない手紙がこういう風に残っているのは、俳句の世界では結構あるんです。そして月見草との取り合わせが、どこまでオリジナリティがあるか、といった時にやっぱりちょっと損をする、だからこれを上位に押すというのは、ちょっと難しい句です。

梅沢さん: じゃあ私がパクったって言いたいのかい!

夏井さん: 直す必要はないんだけど、普通なの。

游々子: 沢山俳句に接していないと、類想句がどの程度あるのかは、判らないですね。この句の問題は、中七下五の内容です。このようなことは、明治の樋口一葉の世界であり、現代ではあまり見かけなく、インパクトも弱いということでしょう。ここが、次に1位となった中田さんの句との違いです。


1位 中田喜子 産声送信ドバイは大夕焼

中田さんはタイトル戦初出場から5年での快挙です。

中田さん: 初めて~
浜田さん: 1位です。
中田さん: 本当に~? 嬉しい!

ここでアシスタントから、10位までにランクインしなかった人の順位が発表されました。この人たちの俳句は紹介されないことになっています。

11位 かたせ梨乃  梨乃さん:くやしい~
12位 横尾
13位 ジュニア  藤モン:何かリアクションせな
14位 ミッツ
15位 村上  藤モン:感情おかしくなってる

梅沢さん: 添削はないんかい。
浜田さん: ないない。それは裏で。
東国原さん: いい句だね~

中田さん: 若夫婦がドバイに転勤して、そこで第一子が誕生した。産声をどうしても両親に聞かせたくて送信した。この産声が出てきたとき、楽しくなって楽しくなって、よし行けるぞ、では都市はどこにする? やっぱりドバイなんです。「ドバイ」とこの「大夕焼」というのが、「産声」にちょうどいい。

浜田さん: 永世名人 梅沢さん?
梅沢さん: えっ?
浜田さん: この句、どう思われます?
梅沢さん: これも普通の句ですよ。こういうものをメールで送るのは、よくあることですもん。「ドバイ」と「大夕焼」を替えただけのもの。

夏井さん: 一番褒めなければいけないのは、産声・生まれた瞬間の声を送りたい、というそこが新鮮でリアリティもあります。ドバイが出てきた瞬間、説明して頂かなくても、これは赴任先の出産であると、そしてどこに送るか? 日本にいらっしゃるご両親のところに違いないと、全部ありありと手に取るように分ります。最後の大夕焼という季語も、ドバイという地名の広がりも勿論ですが、産まれたという安堵ですとか、喜び、そういうものをちゃんと示唆できていると。一句の奥行にホント気持ちのいい光景が広がっていくと。わあ~中田さん! 苦労したもんね。よかった!よかった! 苦労しただけのことがここにちゃんと。嬉しいです!

アシスタント: 中田さんには、賞金30万円とトロフィーが贈呈されます。

游々子: 夏井さんは、最近のラインでは、音声付の動画が送れることを、ご存じではない様ですね。この句の良さは、夏井さんのいうように内容です。メールという最新文明、ドバイという先端の新興都市、そうした環境のなかで、人間の情愛を詠んだことが、最高の効果を挙げています.

最終結果は次の様になりました。

1位 中田喜子(名人6段)
2位 犬山紙子(特待生5級)
3位 森口瑤子(名人初段)
4位 東国原英夫(永世名人)
5位 藤モン(名人10段)
6位 安藤和津
7位 キスマイ千賀(名人5段)
8位 久代萌美
9位 梅沢富美男(永世名人)
10位 勝村政信