写真で見るプレバト俳句添削(29)-7月14日(2)ー

後半の、1ランク上の査定です。メンバーは、皆藤愛子(名人2段)、キスマイ千賀(名人5段)、フルーツポンチ村上(永世名人)の3人です。

皆藤さんは現在、3回連続の昇格中です。

原句 座席五度倒しアイスの蓋剥がす  皆藤愛子

新幹線 プレバト俳句添削

皆藤さん: これは新幹線に乗って深く椅子に腰掛けて、買ったアイスの蓋をペロっとめくる瞬間です。

村上さん: 五度とか、食べるだけじゃなく蓋剥がすとか、細かいところにいくのは流石。前も新幹線でなんかやったじゃないですか。”右肩に枯野の冷気7号車” 新幹線ばっか詠んでんじゃんって思われてだめ。。?
千賀さん:座席五度っていうのが謙虚で良い。僕なんか乗ったらソッコ―45度倒す。

夏井さん:この句の評価のポイントは、上五「五度」、下五「剥がす」にこだわったことの是非です。

浜田さん: 1ランク昇格! 先生から「臨場感がよく伝わる」
アシスタント: 皆藤さんはこれで4回連続昇格で、名人3段となりました。

夏井さん: 座席を五度、この角度で何するのかと思う。そうするとアイスが出て来ます。更に蓋が出て来て、剥がすという動作が出てくる、ここら辺の、”倒し”、”剥がす” という動作の展開も非常に丁寧に書けていると思います。そしてもう一つ、このアイスという省略した形ですね、本来なら「アイスクリーム」「氷菓」とするのが定石なのですが、このアイスという雑な言い方と、剥がすという乱暴な言い方がバランスが取れています。

游々子: 夏井さんの講評で、”アイス” は季語ではないなどと、無粋なことを言われなくて良かったです。アイスの蓋で充分に、蓋つきのアイスクリームであることは判断できます。歳時記の方が不備な例です。この句は細かいところを描写した句で、”なるほど” と思わせるジャンルの句です。良句ではありますが、感動させるジャンルの句ではありません。感動させるような句ばかり作ろうとすると、行き詰ってスランプに陥ってしまいます。そうした折に、このような身近なところの、ちょっとしたことを詠むようにすると、また復活してくる、そんな例の句だと思います。


キスマイ千賀さんは、前回1年1か月ぶりの昇格でした。

千賀さん: 気が付いたら横尾、もう10段でだいぶ差が開いてしまった。

原句 青い氷菓を海に翳す放課後  キスマイ千賀

氷菓 プレバト俳句添削

千賀さん: 学校の放課後に、青い氷菓っていうのがガリガリ君ですよね。海も青いじゃないですか、ガリガリ君も青い。その行為自体に純粋さを感じて、切ない青春の1シーン、彼女にふられたのか、テストの点が悪かったのか、そうした青春を感じさせるような句を作りました。

夏井さん: この句の評価のポイントは、句の内容と韻律のバランスの是非ですが、清水さん、「B」を渡してください。

浜田さん: 君の解説聞いて、先生がどっちか、
千賀さん: え~ そもそも解説へたなんですよ! コレまずいな。「B」の青い感じが不合格みたい。

浜田さん: 1ランク昇格! 先生から「心境がよく伝わる」

夏井さん: 今何を一生懸命聞いていたかというと、この句を長調で明るく奏でたいのか、短調で暗く奏でたいのか、それを聞いておりました。ガリガリ君が出た段階で「A」かなと思った。ガリガリ君を持って、楽しいな、わ~いわ~い とやっているなら、この調べは似合わないのです。この句は、独特の沈んだ暗い切ない憂鬱な調べになっている、しかもこの「翳す」もそういうイメージを持っているじゃないですか。ですから、そういうことを表現したいと仰るなら認めるのです。

浜田さん: わ~いわ~い と言ってなかったっけ。
千賀さん: 言ってない! やめて下さいよ! どうして「A」にしようとするのですか。

游々子: 気持ちが落ち込んでいるとき、氷菓を海に「翳す」ようなことを、十代の少年がやるだろうか、という疑問が湧きます。青い氷菓が、例えば彼女との間での曰くつきのものであったとすると、それは海に投げ入れるのではないでしょうか。「青い氷菓海に投げ入る放課後よ」


村上さんは前回初挑戦で、シュレッダーの洗礼を受けています。

村上さん: 梅沢さんがシュレッダーに掛けられるのはすごく楽しくて、面白いの考えたなと思っていたが、自分が掛けられてみると、何でこんな失礼なことするんだと。

原句 ディッシャーを持って無敵な素足の子  フルポン村上

ディッシャー プレバト俳句添削

村上さん: ディッシャーってアイスを丸く取る器具なんですけど、あれ使いたかったと思っていて、家で大きいアイスは、ディッシャーを買ってもらってやるときに、ディッシャー持っただけで無敵になったなと。素足が夏の季語、更に夏感の元気さが出るかなと。

浜田さん: ボツ! 先生から「店員なの? お客なの?」

夏井さん: もう一つ言わせてもらったら、この句はアイスクリーム売り場? おうちなの? それも併せて聞きたいわけですよ。私、これをぱっと読んだときに、アイスクリームが一杯あって、どれでもいくらでも取っていいよ、と言われて、その時の無敵感、そんな印象で読んだんですよね。素足という季語に辿り着いたときに、アイスクリーム売り場だと素足というのが、ちょっとどうなんだろうと、お家なのかなと、そんなところが読みを迷ってしまったんですね。そしてこの句の中で一番いいのは、”無敵” というこの表現、これを持って来るのはさすが永世名人だと思いますね。その表情や心情が、無敵という言葉で全部伝わって来る。素足が無敵とバランスが釣り合ってない。村上さん、首傾げているけど、永世名人ですのでバランスを考えて頂きたいな、と思うんです。お家なんですね?

村上さん: そうです。
夏井さん: お家で無敵な子なんですね?
村上さん: そうです。
夏井さん: 無敵に釣り合う元気そうな季語、
村上さん: 日焼けですか。
夏井さん: そうです。
伊集院さん: わかるんだ。
夏井さん: わかるんならやろう。
村上さん: 日焼も選択肢に出て来ましたよ。
夏井さん: では何で素足にしたんですか?
村上さん: なんか素足の方が好きなんですもん。

游々子: 私は素足から、これは海水浴場のアイスクリーム売り場で、子供が売り場を任されて、得意そうにしている情景を想像しました。素足でのお家、これは違和感があります。素足が意味をもつのは土の上であって、畳での素足は当り前のことで、何の意味もありません。夏井さんが言っている、お店なのかお家なのかは、日ごろ彼女が主張しているように、どうとでも想像すればよいのであって、論旨の一貫性を欠いています。

今日の三人の中では、私は皆藤さんの句が最も優れていると思いました。