写真で見るプレバト俳句添削(14)-5月12日(1)ー

今回は、MCの濱田さんがコロナの濃厚接触で休みとなったため、キスマイの北山宏光さんが、代役を務めることになりました。濱田さんは、録画で自宅からの出演です。大スターである郷ひろみさんの初出演ということもあり、注目の回となりました。

原句 蝦蛄(しゃこ)の山拓きし祖母の指の反り  ZAZY 凡人2位 67点

蝦蛄

ZAZYさん: 祖父が漁師で、夕方に大量の蝦蛄を貰って来ていたのを、祖母がひたすらに剝いていた。
梅沢さん: 中七が大袈裟。

夏井さん: 句と作者のギャップに驚きました。表現しようとしている内容は良い。蝦蛄の山という映像から始めたのも良いです。見かけより常識的な方ですね。惜しいところは、拓という漢字は土地の開墾のような時に使うもので、オッチャンの言うように大袈裟。もう一つ、中句が過去形になっているが、過去にすると季語の鮮度が落ちる、今作業をやっているとした方が、作品としてはずっと得です。

添削 蝦蛄の山剝く祖母の指反り歪む  こうやっていたら、あなたが今日は1位でした。

游々子: この添削には異議ありです。先ず、”剝く” と ”歪む” と 動詞を二つ使っていることです。しかも、因果関係を持っていて、どうかと思います。また、過去形についてですが、作者の言いたいことが、祖母の追想であるとすれば、過去形で問題なしです。私なら祖母を前に出し、「祖母の指歪むお皿の蝦蛄の山」と致します。


原句 初夏や白球と母の握り飯  郷ひろみ 凡人3位 55点

高校野球

今日注目の郷さんの初句です。

郷さん: この写真を見ていると、子供の頃、野球に夢中だったのを思い出した。
梅沢さん: 季語が動く。

夏井さん: 言いたいことは書けているという句です。季語は動くが、”は” で3つの韻を踏んでいる。シーンを切り分けるテクニックを使うと、俳句がすっきりしたものになります。

添削 初夏の白球母の握り飯  こうすると、2カットとなり、ボールとお握りの丸い印象が強調されます。2つのパーツをさり気なく繋ぐのは、取り合わせの句の、とても大事な要素です。

游々子: 握り飯を、”母” で修飾するのは陳腐だと思います。塩のまぶされたお握りにして、より暑い夏の午後のイメージにした方が良いと思います。「炎天の白球塩の握り飯」。


原句 夏の灯に子を眺めいる時計台  貴島明日香 最下位 50点

時計台

元お天気キャスターだった貴島さんの句です。

夏井さん: 陳腐な擬人化。淡々と映像を描いた方が良い。

添削 夏の灯や子ら帰りゆく時計台  これだけで読む人は、この時計台は子供たちを見守ってくれているのかなあ~と受け取ってくれます。


原句 蝉時雨時もかき消すアスファルト  YOU 才能あり 1位 70点

蝉

YOUさんは、前回に続いての才能ありとなりました。

梅沢さん: ”時を” とすれば、もう5点上がっていた。

夏井さん: 季語の力を信じているのが良い。オッチャン、今日は調子が良いですね。視点が上から下へ移動していて、立体的な光景をもたらしている。俳句は、凄いことを言わなくても、日常のちょっとしたことを掬い取るので、充分としたものです。

游々子: 私はこの見解には同意できません。それというのは、芭蕉や蕪村の名句と評価されているのを見て、やはり凄いと思うからです。この、”凄い” というものを目指すのでなければ、俳句は桑原武夫がいう第二芸術となり、長谷川櫂さんのいうガラクタ俳句となってしまいます。私は、この句の肝は中七の、”時をかき消す” にあると思っています。下五がそれに見合っているかどうかが、この句の評価のポイントです。私は、”時” に、今日の午後の時間に、昔からの長い時間を重ね合わせるべきだと思います。そうすると、下五は、都会をイメージさせるアスファルトではなく、古い境内の太鼓橋のようなものにした方が、奥の深い句になると思います。「蝉しぐれ時をかき消す太鼓橋」。