写真で見るプレバト俳句添削(13)-5月5日(2)ー

後半の、1ランク上の査定のコーナーです。メンバーは、皆藤愛子、千原ジュニア、梅沢富美男の3人です。千原ジュニアの名人10段がなるかどうかが、本日の最大の眼目です。

原句 夏近し恐竜図鑑踏むチワワ  皆藤愛子 名人初段

恐竜

皆藤さん: 家で飼っているチワワが、何でも踏んで歩くので、恐竜にも敬意なく、踏んでいくだろうかと想像した。

ジュニアさん: チワワという小さなものに、恐竜という巨大なものを対比させている。嫌みなほど、計算尽くしている!

夏井さん: この句のポイントは、夏近しという季語の是非です。”チワワの動きが明るい” として、1ランク昇格、2段に! 小さいチワワと大きい恐竜、動かない図鑑と動くチワワ、が対比されていることが、夏近しという、初夏への期待・喜びと相まっていて、時候の季語を使うときのお手本となっている。

游々子: この句を一見したとき、中七下五は素晴らしいものの、上五の季語は動くのではないかと思ったのですが、そうではなかったようです。


原句 開き癖図鑑の虎に春夕焼  千原ジュニア 名人9段

虎

この句は、ジュニアさんが人工股関節を入れる手術で、入院中に造ったものだそうです。iPADで図鑑を2冊買い、退院日ではなく、言葉を指折り数えていたとのことです。

ジュニアさん: 小さい時、虎が好きで、図鑑で虎ばっかり見ていた。そのページに癖がついて、そこが開くようになったところに、夕陽が差し込んできた、という句です。

夏井さん: ”に” という助詞の是非。イージーミスで現状維持。虎のページに夕陽が差し込んでいることになるが、夕焼けは空を染める現象で、夕陽のように差し込んでくる印象はない。

添削 春夕焼図鑑の虎に開き癖

夏井さん: これだと、広い光景から開き癖に迫って来る。いろいろ難しいね、助詞は。

游々子: 語順を変えることで、原句とは内容が異なるものとなっていますが、夏井さんが指摘した問題は解消していて、内容も原句よりは上なので、現状維持は仕方ないと思います。悲願の名人10段は、またもやお預けとなりました。


原句 桜蕊降るハシビロコウ瞬く  梅沢富美男 永世名人

ハシビロコウ

句の紹介の前に、今までのシュレッダーの屑で作った梅沢さんの像が披露されました。

梅沢さん: 今このコーナーで、それが要るか?
アシスタント: SDGs週間ですから。
梅沢さん: 完成させないよ。
ジュニアさん: 今日ので眼鏡ができるんでないですか。

ジュニアさん: この句は破調で、梅沢さんらしくない。東さん憧れを感じる。

浜田さん: 掲載決定! 素晴らしい気付き

夏井さん: ”桜蕊降る” という小さな波動を、ハシビロコウという動かない生き物がキャッチして、一瞬まばたいたのではないか、この気付きが俳句という詩になる、ということを判っている、これが俳人、大したものです。ハシビロコウという動かないものに、桜蕊という微かに動くもの、嫌味のないこの対比、時々こういうものを見せてくれると、私の血が綺麗になります。

游々子: またもや破調の句に、高評価です。”桜蕊降る” を季語として上句にもってきたときの俳句は、私は、「桜蕊降る〇○〇〇の△△△△△」という、中七に句またがりする構造にしないと、座りが悪くなると思っています(例:桜蕊降る参道の白き画布 游々子)。この考えに立って原句を修正してみますと、「桜蕊降る瞬きのハシビロコウ」となります。さらに原句は、名詞動詞名詞動詞 という列になっていて、語感はよくありません。着眼点は素晴らしいので、リズム感を備えた句にならないものかと思います。