俳句的生活(197)-音貞オッペケ祭ー

さる4日、5日、高砂緑地で、2022年度の音貞オッペケ祭が催されました(添付1)。高砂緑地は、かって川上音二郎・貞奴夫妻が別荘を構え、一時期は個人の所有になっていましたが、戦後、市が買い取って、現在のような緑地として整備した処です。ここには、音二郎・貞奴が別荘生活をしていた時に使っていた井戸が、今も遺されています。別荘の名前は、”萬松園” というもので、團十郎別荘の、”孤松庵” を、せめて名前だけでもと、伊藤博文が命名したという逸話があります。

その緑地で、今年は、「八十日間世界一周」という演劇が野外上演されました。もともと「八十日間世界一周」というのは、ジュール・ベルヌというフランスの作家が、1872年(明治5年)に書いた小説で、一般には1956年にアメリカで映画化されたことで有名になりました。(前年の1955年には、ジェームス・ディーン主演の「エデンの東」が公開されていて、この頃がアメリカ映画の全盛期でした。)

「八十日間世界一周」が高砂緑地で公演されたのには、この劇が音貞一座のレパートリーの一つとなっていたからです。その時の台本は今に残っていて、明治30年版と43年版の二つがあります。今回のものは、貞奴が男役で主人公を演じた明治43年版のものです。明治時代の弁士のようなセリフで、一部七五調になっている場面もあって、脳に心地良い刺激を受けるものでした。主人公が東に向かう旅に合わせて、観客も移動していくという野外劇で、高砂緑地の中を一周するというものでした。

この野外劇には、市会議員の長谷川由美さんも女優として出演していました。主人公と親しい伯爵が生き別れとなった娘役で、最後の場面で、主人公が世界一周したことを証明するパスポートを届けるという、重要な役を演じていました(添付2 左端が長谷川さん 中央が主人公 右端が従者)。長谷川さんは、大学のとき演劇部に所属し、卒業後に衆議院議員の秘書を経て、茅ヶ崎市の市会議員となられた方です。当市の文化事業推進を担っていて、4月の俳句大会では、2句ほど投句されています。

劇の方は、出発地点に到着したときは、80日を過ぎていて、アウトとなったと思いきや、太平洋のほぼ中央に引かれている東経180度の日付変更線を、西から東に一度通過していたため、日付的には1日短縮されていて、セーフとなるというものでした。

この劇は全編、オッペケ祭実行委員会によって動画撮影されていて、早晩ユーチューブに公開されることと思います。その時に、本稿に追記として、動画へのリンクを張る予定です。

石蓋の井戸や明治の松みどり

添付1
添付2