添削(6)ーM.Hさん しおさい会(1月)ー

原句 水仙花吾をつらぬく能一管

中七の「吾をつらぬく」、こうした強烈な表現は、往々にして浮き上がってしまうことが多いのですが、本句の場合は、能一管の高音の響きとぴったりと合い、季語との取り合わせも適切で、秀逸な句となっています。直すところはありません。


原句 手袋やパリの香まとひローチェスト

最初、パリの香をまとっているのが、手袋なのかローチェストなのか、どちらであろうかと迷いました。おそらくは、パリ旅行したときに買った手袋が、今自宅のローチェストに仕舞われている、ということでしょうから、自宅の景は端折って、パリに集中した方が良いと思います。パリ旅行はご主人と一緒だとして、それを暗示する表現にしては、如何でしょうか。

参考例 パリの香をまとふ手袋二揃い


原句 初句会一句の力信じをり

下五の「信じをり」が非客観的で、弱々しいです。ここでも「吾をつらぬく」が使えるのではないでしょうか。「初句会吾をつらぬく句の力」。

参考例 渾身の初句真白き和紙に開く