添削(1)-宇野桑梓さん 2021年3月 しおさい会ー

原句 名の木の芽満ちたる山の広さかな

上五は、名の通った木の芽 ということでしょうか? 名木ー榧―囲碁―日向―明智日向守ー天下 と連想を拡げてみました。

参考例 榧の木の芽吹く日向の天河かな


原句 卒業す水溶性の恋のまま

素晴らしい着想です。直すところはありません。上五を「や」で切ることも考えられますが、そうすると卒業が強くなりすぎて、中心となるべき中七下五が弱くなってしまいますので、このままで良いです。


原句 燕来る海と空との碧を飛び

この句は、若山牧水の「白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ」を意識されたものと推察しますが、空と海を青色として捉えるのは、例が多すぎてユニークさがありません。むしろ南方から遥々飛来してくることを詠んでみては如何でしょうか。

参考例 空と海紛ふことなし初燕