鬼を狩る子孫 第一話 見えない請求書(23)

(23)
竹内先生は保健室のベッドに横たえられていた。
顔色はまだ青ざめていたが、苦しげな影は消え、穏やかな寝息を立てている。

「よかった……ほんとによかったな」
蓮が安堵の笑みを浮かべる。

教室に残った子どもたちも次第に落ち着きを取り戻し、互いに声を掛け合っていた。
さっきまでの重苦しい空気は、まるで夢だったかのように晴れていた。

悠夜は手のひらに収めた勾玉をじっと見つめた。
まだ淡い光を宿しているそれは、まるで心臓の鼓動のように静かに脈打っていた。

「……これが俺たちの力なんだな」
小さくつぶやいた声は、蓮に届いていた。
「そうだよ。みんなで守ったんだ。請求書なんて、怖くねえ!」

創作小説の挿絵

二人は笑い合う。
確かに “支払い” は乗り越えられた。
少なくとも、この学校では。

──だが、その夜。

村はずれの古い祠。
誰もいないはずの闇の中で、黒い霧が蠢いていた。

創作小説の挿絵

「……ちっ。人の子ごときに、我が影を退けられるとはな」
低い声が響く。

霧の奥から、かすかに角を生やした巨躯の影が浮かび上がる。
その眼は深紅に燃え、怒りを押し殺すように歯ぎしりをしていた。

「だが……支払いは終わらぬ。
 次なる舞台で、必ずや――心ごと喰らってくれる」

その影こそが、かつて悠夜の祖先、霧の小次郎が相対した宿敵。
鬼の王。

夜風がざわめき、祠の周囲の木々がいっせいに震えた。
闇の奥から不気味な笑いが、静かな村へと広がっていった。

──戦いは、まだ始まったばかり。

【第一話・完】

引き続き第二話をお楽しみください。