鬼を狩る子孫 第一話 見えない請求書(20)
(20)
白い光が勾玉から放たれ、校舎を覆っていた影がいったん退いていく。
しかし安堵は長くは続かなかった。
体育館の床に、黒い紙片がぱらぱらと降ってきたのだ。
子どもたちが拾い上げると、そこには一様にこう記されていた。
《請求書 支払期限切れ》
「な……なんだよ、これ」
蓮が青ざめる。
竹内先生――いや、鬼に憑かれたその姿が、闇の中に浮かび上がる。
目は虚ろで、それでも口元だけが笑っていた。
「支払いとは……おまえたちの心そのものだ。
希望や友情、夢や未来……それらを差し出せば、楽になれる。
この学校も、この国も、すでに “負債” に縛られておるのだ」
ぞわり、と子どもたちの胸に寒気が走った。
悠夜は勾玉を強く握りしめる。
祖先の声が脳裏に響く。
――「霧に紛れて奪われるものは、いつも “心” じゃ」
請求書とは、命や金そのものではなく、人の心の支払いを意味していた。
だからこそ、校舎から笑い声が消え、給食の味さえ薄れていったのだ。
「……そうか。支払えっていうのは、心を明け渡せってことなんだ」
悠夜の声が震える。
蓮は歯を食いしばり、声を張り上げた。
「ふざけんなよ! オレたちの心を勝手に値札みたいにするな!」
その叫びが、再び勾玉を淡く光らせた。
仲間たちも一人、また一人と声を合わせ始める。
「友情は渡さない!」
「夢は、私のものだ!」
「希望だって、負債じゃない!」
光が次第に大きくなり、黒い請求書を次々と燃やしていく。

竹内先生の表情に、初めて焦りが滲んだ。
「……なぜ抗う。おまえたちに抗う術など……」
「あるんだよ」
悠夜はまっすぐに睨んだ。
「勾玉の力と、みんなの心があれば」


