俳句的生活(326)-連句(13)-

連句も早13回目を迎えることになりました。4人での順番を決めることはいつも難問になっています。ポイントを

①各自9句とする
②発句および挙句は4回に一度廻ってくるようにする
③恋は必ず詠む
④花の2句および月の3句は別の人を割り当てる

に置いていたところ、今回は長句短句の割り振りに酷い偏りが生じてしまいました。次回は⑤割り当てが長句短句に偏らないようにする  を新たな指針として、完成形のものを作ってみたいと思います。

連句(13)『竹送りの巻』
令和7年 3/15(土)〜3/18(火)
連衆: 游々子 典子 紀子 二宮

(発句)   仲春や清らを運ぶ竹送り     游々子
(脇句)       修二会寒をも忘るる火の粉        典子
(第三句)  幻か夢か現か亀鳴いて      紀子
(第四句)  甲羅干する朝陽かな       二宮
(第五句)  更級は田毎に月の重きなる    游々子
(第六句)  新蕎麦茹でる老婆と息子     典子
(第七句)  天の川芭蕉の旅に思ひ馳せ    紀子
(第八句)  馬車で旅するイザベラ・バード  游々子
(第九句)  忍恋八戸古着三浦暖       二宮
(第十句)  文豪の書を買ひ書肆奥へ     紀子
(第十一句) チケットの獲得難しミュージカル 典子
(第十二句) 背に素数付けドーム一周     游々子
(第十三句) 五七五数へ眺むる夏の月     紀子
(第十四句) 藍の浴衣は吊られたままで    典子
(第十五句) 火事多し原人炎まず進化     二宮
(第十六句) 錫杖残る劔岳(つるぎ)の頂    游々子
(第十七句) ひとときを濁世を離れ花の世に  紀子
(第十八句) 法螺貝響く春の大峰       典子
(第十九句) ランドセル黄色カバーで行き始め 二宮
(第二十句) サラリーマンはスーツ誂へ    紀子
(第二十一句)英語聞きAI学ぶ世間見る    二宮
(第二十二句)万博までのカウントダウン    典子
(第二十三句)燦燦と昇る日を浴び山眠る    紀子
(第二十四句)百鬼夜行の鹿ヶ谷道       游々子
(第二十五句)夢洲は少し遠いと思案する    二宮
(第二十六句)揃ひの靴で動物園へ       典子
(第二十七句)太く濃く我が手のひらの恋愛線  紀子
(第二十八句)光悦垣は菱形模様        游々子
(第二十九句)昔人遠近問わず月芒       二宮
(第三十句) 女人高野の紅葉燃え立つ     典子
(第三十一句)宵闇やブルーライトの河原町   游々子
(第三十二句)出町柳で一休みする       二宮
(第三十三句)夜景なほ百万ドルのビル灯り   紀子
(第三十四句)お釈迦も我も星の屑より     游々子
(第三十五句)近江路へ花の便りに誘はれ    典子
(挙句)   琵琶湖と遊ぶさざなみの春    二宮

本連句は奈良東大寺の修二会から始まりました。発句の「竹送り」とは、松明に使われる竹は、古くより山城の国(京都)から人の肩に担がれて運ばれていたことのものです。脇句でははっきりと修二会を出し、3句では松明の行事を幻夢現と詠みました。季語で「亀鳴く」と出たから4句はその甲羅干しへと繋がっていきます。5句ではカットの切り替え。田毎に月が映ると田圃も重くなってしまうだろうとの連句的な詠み。6句は更科の姥山伝説で老婆と息子がでてきて、7句は芭蕉繋がりで、更科から奥の細道へ。8句は芭蕉の蚤虱の句を踏まえ、自身の寝台を馬車に乗せて明治10年に東北を旅した英国の女性探検家で、明治10年という年は東北ではまだまだ江戸時代が続いていたようです。9句は東北つながりで八戸出身の三浦哲郎ですが、三浦の実家は古着屋さんであったとのこと。10句は作家から書店へ。11句は場面の切り替え。12句はチケットから大谷の東京ドームでのホームラン。13句は大谷の背番号が17であることから五七五、と続いていきます。