俳句上達のヒント(4)-助詞の使用は要注意ー

初めて日本語を学ぶ外国人が、異口同音に難しいというのは、助詞の使い方です。英語には、場所や方向を示す in や at、to のような前置詞はありますが、主語や目的語は、裸のままです。考えてみれば、私たち日本人も、小学校に入り立ての頃は、文章を書く時の助詞の使い方には、苦労したものです。

成人して、助詞の使い方などは卒業したはずの私たちですが、俳句を作る段になると、また助詞の使い方をあれこれ言われる、その理由は、作ろうとするものに散文と韻文の違いがあって、私たちが今まで習ってきた文章は散文であり、これから作ろうとする俳句は韻文であるからです。

助詞の代表的なものに、”て” と ”に” があります。こうした助詞が使われた句が、しおさい会で幾つか散見されました。

① 縄のれん隙間をうめて夕立かな
② ひぐらしの声重なりて山の道
③ 師の授業楽しき声に風薫る

”て” は、一つのことが終了して次に何かが起こることへの繋の役割を持つ助詞です。①の句意は、縄のれんの隙間を埋めるように夕立が降って来た、ということのはずですから、継承の助詞 ”て” を使うのは、正しくありません。よしんば、継承の場面であったとしても、継承は間延びした感じとなりますから、切り口の鋭さを命とする俳句としては、使用を避けるべきなのです。②の句意は、山の道に蜩の声が重なっている、ということですから、ここでも、”て” の使用は不適切なのです。従って、①、②は、次のようにするのが、俳句的と言えます。

①’ 縄のれんの隙間を埋める夕立かな
②’ ひぐらしの声重なるや(または、声の重なり)山の道

”に” は、方向を示すもの(to)、場所を示すもの(in または at)、そして、~によってという手段を示すもの(by)の、三つの使われ方があります。③の ”に” は、場所あるいは手段の ”に” ですが、”に” を使うと、どうしても説明的(散文的)となり、使用を避けるのが、賢明です。

③’ 張りのある響く師の声風薫る

なるたけ助詞を使わずに、句を切っていくことを、心掛けましょう。