鬼を狩る子孫 第二話 影を落とす契約書(10)

最初の現場調査
工事現場のフェンスの向こうには、鉄骨がむき出しの校舎の骨組みがそびえていた。夕暮れの光が赤茶けた鉄に反射し、まるで巨大な檻のように見える。

「うわ……想像以上にゴツいな」

蓮がフェンスの隙間から覗き込み、口をとがらせる。

「静かだな。今日は作業終わってるのか」

大地が腕を組む。父親が工事関係者だけに、少し複雑そうな顔だ。

悠夜はフェンスに指をかけ、背伸びして中を見渡した。

「ほら、あそこ。積んである資材……番号が振ってあるの、見える?」
「んー……“SK12”とか“PC34”とか書いてあるな」

蓮が目を細める。

「図書館で見た紙片、“仕様違反”って書いてあったよな。資材の種類と関係してるんじゃないか?」

悠夜が小声でつぶやく。

「でもよ、番号見ただけで違反とか分かるわけ?」

蓮が肩をすくめる。

「分からない。でも……写真を撮っとけば、後で照合できるかもしれない」

悠夜はポケットからスマホを取り出した。

「おいおい、撮影禁止とか言われたらどうすんだよ」

蓮が慌てるが、悠夜は笑って答える。

「ここから覗くだけならセーフだろ。俺たち、泥棒じゃないし」
「言い訳は準備万端だな」

蓮が苦笑し、大地は無言で見守っていた。

シャッター音が小さく響く。鉄骨と資材の影が、写真に刻まれていく。

「よし、もう十分だ」

悠夜がスマホをしまうと、蓮が声を潜めた。

「なあ……もしかして、俺たち、本当にとんでもないことに足突っ込んでないか?」
「今さら?」

悠夜が軽く笑う。その横で、大地が真剣な声を出した。

「でも……父さんたちが関わってるなら、知らんぷりはできない。俺は最後まで付き合う」
「おー、さすが正義の味方」

蓮が肩を叩くと、大地は苦笑いを返した。

三人は夕闇に染まり始めた校舎を後にした。
フェンスの向こうに残った鉄骨は、不気味に沈黙していた。