鬼を狩る子孫 第二話 影を落とす契約書(9)

誰に見せる? 見せない?
「で、この紙片……どうすんの?」

蓮がテーブルをトントン叩きながら言った。

「先生に見せる?」
「いや、ダメだろ」

悠夜が首を横に振る。

「なんでさ。先生なら何とかしてくれるかもしれないじゃん」
「逆に “持ち出したのは誰だ” って騒ぎになる。そうなったら俺たちが一番に疑われる」
「……確かに」

大地がうなずいた。

「でも、じゃあ警察?」
「それこそムリ。『子どもが図書館で拾いました』なんて言っても、まともに取り合ってくれないよ」
「じゃあどうすんだよ。結局、行き詰まりじゃん」

蓮が両手を広げる。

創作小説の挿絵

悠夜は少し黙り込んでから、紙片を指でトントンと叩いた。

「俺たちで確かめるしかない」
「出たよ、探偵ごっこ」

蓮があきれ顔をする。

「いや、冗談抜きで。仕様違反って、たぶん資材とか工事のことだろ。だったら、現場を見れば分かるはずだ」
「おいおい、工事現場なんて入れるかよ。フェンスだらけだぜ?」
「フェンスぐらい、見上げれば中は覗ける」

悠夜の声に、蓮と大地は顔を見合わせた。

「……まあ、悠夜にしては筋が通ってるな」
「俺は反対しない」

大地が静かに言った。

「だって、俺の父さんも工事に関わってるし……もし本当におかしなことがあるなら、知らんぷりできない」
「おお、ついに息子の正義感が炸裂」

蓮が茶化したが、その表情はどこか引き締まっていた。

三人は、店を出ると駅前の夜風に吹かれた。

「決まりだな。明日、放課後だ」

悠夜の声に、ふたりは黙ってうなずいた。