鬼を狩る子孫 第一話 見えない請求書(8)
(8)
祠で勾玉を継いだ夜から数日後、悠夜は町に戻った。
いつもの学校の教室。ざわめきに満ちた日常の空気が、妙に遠く感じられる。窓の外に差す朝の光の中にも、わずかに白い霧が立ちこめているのに気づいたのは、彼だけだった。
――祠で見た影と同じだ。
そのとき、クラスの隅で小さな騒ぎが起きた。
転入してきたばかりの少年が突然立ち上がり、頭を抱えてうずくまったのだ。周りの生徒はただ驚いて見守るばかり。
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悠夜の胸に、祠で黒装束の男が告げた言葉がよみがえる。
「霧は人の心にも忍び込む」
彼は机の下でそっと勾玉を握った。すると、少年の周囲に淡い影が揺らぎ、誰にも見えない「霧の客」の気配が漂っているのがわかった。
その影は、村の祠で見たものよりもずっと不安定で、荒々しい。
悠夜は心の中で強く念じた。――静まれ、と。
勾玉がわずかに熱を帯び、影はゆっくりと薄らいでいった。やがて少年は肩で息をしながら顔を上げ、「大丈夫」と小さくつぶやいた。
だがその一部始終を見ていたのは、クラスの誰でもなく、竹内先生だった。
先生は朔太郎の手元に目をやり、微かに眉をひそめた。まるで何かを知っているかのように――。
日常に戻ったはずの学校生活に、祠で継いだ宿命が影を落とし始めていた。

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