俳句的生活(307)-鴫立庵(2)湘南発祥の地ー
現在 “湘南” という言葉から直に連想されるのは、葉山から茅ケ崎に至る湘南海岸で、これは多分に昭和30年代以降の石原慎太郎や加山雄三・桑田佳祐らのイメージに依ったものと思われますが、発祥の地は大磯で、現在の鴫立沢あたりが西行の和歌のイメージに最も添うものと、ここに最初に庵を結んだ崇雪(そうせつ)という人が命名した地域名なのです。
鴫立庵から一国に出た所には次のような案内板と石碑が立てられています。


案内板に書かれている「著藎湘南清絶地」は「清らかで清々しく、このうえもない所、湘南とはなんと素晴らしい所」という意味です。もともと「湘」とは中国の湖南省を流れる湘江のことで、湘南でもって、湖南省の南部地域を指しています。崇雪という人は、小田原の外郎家の八代の正治の次男になる人で、室町時代に祖先が中国の湖南省から渡って来たことにより、湘南という名称を付けたと伝わっています。
崇雪が小田原より持ち込んだ五智如来は鴫立庵の中に納められています。

崇雪という人物を出した外郎家は、今も小田原で営業を続けています。先日、外郎本店に電話をして、崇雪のことを確かめたのですが、応対して下さった方は即座に八代目の次男であると答えられました。それだけ崇雪は外郎家の中で格別の人物になっているのでしょう。外郎本店は下の写真のように、八棟造りの天守閣のようなものになっています。

「湘」という字は瀟湘八景に使われている湘で、崇雪が命名してくれた御蔭で、湘南が現在ブランド名として流布していることは、有難いことです。