写真で見るプレバト俳句添削(31)ー7月21日 炎帝戦(2)ー

2位 犬山紙子 恋を終わらせ平日の海月(くらげ)見る

くらげプレバト俳句添削

犬山さんは、昨年の炎帝戦で優勝した人です。一度特待生から陥落しましたが、直ぐに復帰して、現在特待生5級です

犬山さん: 別れようかずっと悩んでいた人に、メールで ”別れましょう” と送ったんだけど、やっぱり気持ちはフワフワしていて。平日に送っちゃっているんですよ、会社とかある日に。その日は会社も休んで、水族館に行って海月を見て、癒されるというか、そんな句を詠みました。

梅沢さん: いや、素晴らしい俳句ですよ。今説明に、水族館出ましたけど、それを説明しなくても直ぐわかる。見事だね、これは。

ジュニア: 平日の海月、素晴らしい、平日はすごい。

夏井さん: 犬山さんだったんですね。素晴らしいです! この句もどこにも ”メール” とか ”携帯” がないのですが、読んだだけで、別れのメールとわかりますね。相手はまだ未読のまま、宙ぶらりんの時間かも知れない、仕事休んで傷心のままの有給休暇かも、と想像させます。更に、海月(夏の季語)でなく他の生き物でも良いんですけど、海月が揺れ動く失恋の心、それを冷ややかな、そして多分薄暗い空間ではないか、冷やかさと薄暗さが心を癒してくれる。「見る」は俳句では一般的に不要ですが、ここは必要な「見る」ですね。海月をボーっと見つめている、その海月の向こう側に、今の自分の心を見つめている、そういう時間でもあります。

游々子: ”平日” という措辞ですが、これは閑散とした状態を表現するときにも、使用できます。「平日の三笠Z旗秋の潮」。横須賀の三笠記念艦は、休日でも人は少なく、平日だとより閑散としていて、関心が薄れてきていることを実感します。Z旗が何なのか、知らない人が増えてきました。


3位 森口瑤子 メールぴこんぴこんシャワー中だってば

スマホプレバト俳句添削

森口さんは名人初段です。

森口さん: メールとかラインとかって、すごく便利になった部分と、束縛・自由を奪われてるなという部分があるので、シャワー中は絶対出られないのに、そういうときに限ってメールがピコンピコン何回も鳴って、もう、と思ってしまう。

村上さん: この遊び心、森口さん、俳句とジャレてますね。

ミッツ: 入れ食い状態ってことですよね、これ。いいな~と思って。こんなにモテてね。ひっきりなしに鳴ります? シャワーなんて5分から10分のものでしょ?

森口さん: 仕事のメールとか、ですよ。

ミッツ: 仕事のメールなんか、ピコンピコン来たって、そんなに気付かないじゃないですか。やっぱり恋してるとき、

浜田さん: もうえ~わ。

夏井さん: こういうやり方もあるかと思いましたね。そして何よりも ”ぴこんぴこん” が上手いですね。オノマトペにリアリティーというか実感というか、この音がみんなの耳にちゃんと聞こえて来ますもんね。更に ”だってば”。甘えた大人の可愛い感じ、こんなの書ける人、羨ましいと思いますよね。そして何よりも私、今あなたが立ち上がってイメージ通りで本当に良かった。これがオッチャンだったら、すごい嫌だなと思いました。

梅沢さん: 書けるわけないでしょ。

浜田さん: 確かに確かに、そりゃ気持ち悪い。

アシスタント: 残るランキング席は5席ですが、まだ名前を呼ばれてない方が10人もいます。

浜田さん: これ、永世名人が3人残ってるでしょ。名人10段も3人残ってるでしょ、ほっほっほっ、今回はすごいな! さっきからこっち、どんよりしてるわ。

游々子: プレバトのような現代世相の俳句においては、経験の積み重ねで伝統的なものに精通することより、一発の感性で優劣が決まるということでしょうか。


10位 勝村政信 夏の雲逝くな逝くなと文字叩く

夏の雲プレバト俳句添削

勝村さんは、現在も夏井さんから破門中で、この句は、友達の奥さんの葬儀のときのものだそうです。

夏井さん: こいつだったのかと、今憮然としています。10位と11位、本当に迷ったんで、替えときゃよかったね。

浜田さん:まだ怒ってる~

夏井さん: まあ、夏の雲と人の生き死にを取り合わせる句が無いわけではないんです。ただ、これは妙な切迫感があるんです、この句全体に。で、この最後の「文字叩く」、ここなんですけど、技術的に言わせてもらうと、決して上手いわけじゃないんです。むしろ稚拙な感じがする。でも稚拙さ、そこにリアリティーが強く出てくると。そこがこの句の一番の魅力というか、作品としての力だと思っています。ただ、夏の雲、ここが妙に落ち着いているんです。これは詠嘆した方が良いです、「夏雲や」と。こうすれば順位は微妙に変わったかも知れないですね。いずれにしても、こいつだったのかという思いです。

游々子: 判り易さ、リズムの良さという点ではこの句が一番で、我々の句会であれば、高得点を取ったと思います。