写真で見るプレバト俳句添削(30)ー7月21日 炎帝戦(1)ー

今年の炎帝戦は、出場資格を持つ231人から58人がエントリし、トップ15人が出場することになりました。その中には、名人・特待生でない安藤和津、たかせ梨乃、勝村政信、久代萌美の4人が含まれています。この15人から10位までを決めようという戦いです。そして今回のお題はスマホメールです。

8位 久代萌美 社食から花火原稿音読す

社食 プレバト俳句添削

久代さんは元フジテレビのアナウンサーで、初出場から2か月しか経っていないという人です。

久代さん: 花火大会を見に行く予定があったが、急遽メールでシフトが送られて来て、深夜のニュース番組対応になった。社員食堂で原稿の下読みをしながら、東京湾の花火が上がっている切ない情景を詠みました。

梅沢さん: いい俳句じゃないですか。大したもんだね、こういう俳句を考えられるなんて。もう見ただけ読んだだけでこの気持ちがよくわかる、素晴らしい!

ジュニア: いいですね~。本来は行けるはずだった花火大会に仕事が入ってという、、これがキッカケでフジテレビ辞めたんですか?

(笑い)浜田さん: 先生~

夏井さん: いやこれね、どこにもメールとか携帯とかそんな言葉は一言も入っていないですけど、社食ですからね、読んだだけで花火大会には行けず、自分は仕事をしている、ひょっとすると花火大会に行っているお友達から、写真が送られてきたかも、ぐらいのことは想像できますね。そこら辺が良かったと思います。でね、ちょっとだけ、素材は良いんだけど順位を落としてしまっているんです。語順が逆なんです。あなたの手元の原稿から始めて、最後に花火を残すと。そしてもう一つ、この音読というのは、子供の国語の宿題みたいな空気感を感じてしまう人がいるので、何か別の言葉がないか思っていたんですが、あなたが今おっしゃいました!

久代さん: 下読み!

夏井さん: それそれそれ!

添削 原稿を下読み社食から花火 

こうすると季語の花火がしっかり残るでしょ。でもお顔見てびっくり。素晴らしい!

浜田さん: こっち(名人・特待生でない4人)から一人出ました!

游々子: 素材の着想は素晴らしいが、技術で順位を落としたということですが、オリンピックの体操やフィギュアスケートのように、評価の要素項目ごとに点数を付けて、その合計点で競うというように俳句もならなければいけないと思います。プレバトでも、水彩画の方はそのやり方を取り入れているので、俳句でもその方法を導入してほしいものです。

この句について、私は ”社食” が季語の花火よりも重要な言葉だと捉えていますので、原句のように、先頭に置くのが良いと思います。「社食から花火原稿下読みす」


7位 キスマイ千賀 緋ダリアや「メール不達」のメール来る

緋ダリア プレバト俳句添削

夏井さん: ああ、これが千賀さんなんだと、本当に。東さんもおっしゃったけど、取り合わせたこの季語がいいですね。ダリアというのはね、好き嫌いが物凄く分かれるんです、みなさん。ダリアの特に赤にはね。情熱的な想いとか派手やかさを感じて、好きだという人もいれば、不穏な感じがするとか、真っ二つに分かれるんです。その思いがこの中七下五にそこはかとなく響き合っている。勿体ないのは、上五で詠嘆したい気持ちは分かるんですが、ここに特色を入れるなら、上五を「ダリアは緋」と色の印象を後に置く。

添削 ダリアは緋「メール不達」のメール来る

そうすると、この ”は” に意味が乗っかってくるんです。ダリアには色んな色があるけれど、今眼前にあるダリアは緋色であると。メールも色んなメールがあるけど、今届いてないというメールがここにある。”は” の一字を入れて、安易に詠嘆するよりは、この場合は良かった。

游々子: 元彼女にスマホでメールするのは、電子メールではなく、ラインのメールであろうと想像するのですが、ラインでは、「メール不達」のメールは返ってこなく、そこに違和感を覚えます。取り合わせた緋ダリアの季語がぴったりしているのかどうか、私にはよく分かりません。


6位 安藤和津 白雨受くネットショップのダンボール

ダンボール プレバト俳句添削

安藤さんは、ご主人の奥田さんが俳句をやっておられる方です。

安藤さん: 物をネットで買うことが当たり前になってて、どこの家でも、玄関前に色んな段ボールが積まれている、うちもそうなんですけど。で、突然の雨がダ~と降って来た時に、その段ボールが切なく悲しげに濡れそぼっている姿を見た時に、このあと雨を含んだ段ボールを処理する人も大変だな~と、なんかこう切なくなった段ボールの一句だったんですけど。

藤モン: 生活の何気ない一部を、見事に切り取ったいい俳句やな~と、僕思いましたけど。あと安藤さんがネットで何買ってんやろと。

夏井さん: 上五がうまい。白雨という季語を選ばれた。白雨は夕立だけど、にわか雨というニュアンスが強いんですね。白の一字が負の印象を強くしない。あと褒めなければいけないのが、ここ “受く” です。この動詞によって、コロナ禍の今どきの置き配という新しい文化が出て来ましたよね。大したものだと思っております。そしてこうやって特待生でない人が続々と出て来て良いんですか?

浜田さん: こっち(名人・特待生)の空気が変なんやけど。何なん。

藤モン: 夏井先生がワクワクするの、変やないですか?

游々子: この句も、久代さんの句と同じように、素材が良いです。濡れたあとの処理にまで想像をめぐらすのと、夏井さんがコメントしたように、世相を反映した佳句だと思います。