写真で見るプレバト俳句添削(21)-6月9日(2)ー

後半の特待生昇格試験です。出場者は、キスマイ千賀(名人4段)、立川志らく(名人5段)、梅沢富美男の3人です。

原句 雷声や絶島のロンサムジョージ  キスマイ千賀 

ロンサムジョージとは、ガラパゴス群島のピンタゾウガメの最後の個体で、絶滅したものです。

亀

夏井さん: この句のポイントは、雷ではなく雷声、孤島ではなく絶島を選んだ是非です。

浜田さん: 1ランク昇格! 先生から、”良いたくらみ”

夏井さん: ここまで発想を飛ばすことの是非はあるかも知れませんが、とてもよく企めています。雷と雷声、現象としては一緒なんですが、”声” の一字があるだけで、絶滅する生き物の叫びのような印象を匂わしている。雷声・絶島という硬い大袈裟な響きも、ロンサムジョージによって、大袈裟ではなくて企んでやっている、とちゃんと伝わってきます。

游々子: この句は、絶滅した個体を、ケーキ屋の最後に残ったケーキに引っ掛けたものですが、中七下五でどれだけの詩情を出せているかというと、大いに疑問です。絶滅した個体名と場所は、いくらでも捻りだされるものです。


原句 清貧の菓子屋青簾に忌中  立川志らく

菓子屋

志らくさんは、先月のタイトル戦で初優勝しています。

志らくさん: 反響が凄いんですよ。地方の独演会へ行くじゃないですか。あたまでプレバトと言っただけで、”おめでとう” ”ブワー” となるんですよ。

梅沢さん: ”清貧” 必要?
志らくさん: あえて入れたんです。
梅沢さん: あっそう。

夏井さん: この句のポイントは、句またがりの型を選んだ是非です。

浜田さん: 1ランク昇格! ”まるで短編小説”

夏井さん: ”清貧の菓子屋” で小さなストーリーを持っている。段々流行らなくなって、でもこだわりはすごくあって、という、そんなお菓子屋さんが見えてきます。青簾以下でストーリーが動きだす。”青” と忌中の”白” と ”黒” が色彩的に鮮やかです。読み終わったあと、このお菓子屋はどうなっていくんだろうと、想像し始める。そういう一句になっています。

志らくさん: チャンピオンの面目が保てた!

游々子: 原句は、8+9の破調句ですが、七五を付け加えて、四行詩にすることができます。

清貧の菓子屋
青簾に忌中
二週間して
剝がされた

つまり、原句は俳句ではなく、通常の詩の一部であるとした方が、似合っています。


原句 言の葉や追えば消えゆく夏の蝶  梅沢富美男

 

蝶

梅沢さん: 俳句は最後の言葉で大変印象が変わってくるもので、なかなか良い表現を見つけられないものです。夏の蝶も同じで、なかなか出てこない、知らん顔をすると寄ってくる。

浜田さん: ボツ! ”ゆるい”

夏井さん: 蝶の描写として、中句は ”ありがち” で ゆるい。もったいないです。

添削1 言の葉や追えば夏蝶風に消ゆ
添削2 言の葉や追えば黒揚羽は風に

游々子: 原句に ”ゆるみ” を感じる原因は、中七が、”追えば消えゆく” と動詞を二つ繋いでいるからで、それを解消した添削1は良いと思います。しかし破調となっている添削2は、”ゆるい” どころの騒ぎではなく、五七五のリズムを無くした罪の方が、遥かに大きいです。現代俳句がいつから破調句を許容したのか定かでありませんが、一度俳句をやる人を対象として世論調査を行い、多数決で、許容の是非を決めれば良いと思います。