写真で見るプレバト俳句添削(20)-6月9日(1)ー
今日の前半の4人は、全員が才能ありの経験者です。お題は、ケーキ屋さんの最後の1個。分布は才能ありが2人、凡人と才能なしが一人ずつとなっています。
原句 母老ひて濡れ傘杖に苺買ふ 藤真利子 凡人3位 60点

藤さん: 母が傘を杖にして、自分の大好きなショートケーキを買っているのを詠んだ。
梅沢さん: 俳句としては非常に良かったのだけど、無駄な言葉がある。老いていれば杖つきますよ。
夏井さん: ものすごく惜しい句です。中七のお母さんの観察、それに苺がよいですね。日常のささやかな幸せを象徴しています。惜しいのは、オッチャンの言う通りなんです。“老ひて” を書かなくても、充分に想像してもらえます。
添削 苺買ふ母よ濡れ傘杖として
夏井さん: こうすると、これが今日の1位だった。
浜田さん: どうですか?
藤さん: これすごい、素敵ですね! なっちゃんスゴイわ!
游々子: この情景での母を、”よ” でこれほど詠嘆する必要があるのかと思います。「苺買ふ母濡れ傘を杖として」ぐらいで良いのではないでしょうか。
原句 鼻に汗最後のグミを舐める吾子 平井理央 才能あり2位 70点

平井さん: グミを好きな子が、最後の一つになると、アメみたいに舐める、その様子が可愛らしく、愛しい。
千賀さん: ”食べる” ではなく、”舐める” で、最後の貴重な感じがでている。
夏井さん: 日常の小さな出来事を素直に書こうとしている。その態度が良いですね。”舐める” が可愛いです。このまんまでもよいのですが、やれることはまだあります。
添削 子の鼻の汗よ最後のグミは舐め
平井さん: ”上を目指すなら” という先生の言葉が、今、心に沁みてます。
游々子: これも、”よ” で大袈裟な詠嘆をしています。汗が詠嘆の対象となるのでしょうか。詠嘆の安売りです。
原句 前の人頼む!頼むな!ラス苺 小藪千豊 才能なし最下位 20点

小藪さん: アカンのですね。この写真見たとき、これしか思ったことがない。何人かいてはって、だんだん無くなってくると、頼む!頼むな! と僕はいつも思うてた。
梅沢さん: 写真みてたらわかるが、字面だけではさっぱり分らない。
夏井さん: 写真をみている前提で俳句は存在するわけじゃない、俳句は字面が全てなのですよ。俳句は、頼む!頼むな! と絶叫するよりも、淡々と場面を描写するものです。
添削 苺ケーキ残り一つの列にゐる
夏井さん: 苺だけ使えました。
游々子: クールジャパンというNHK-BSの番組で俳句特集があったとき、外国人たちが一様に興味を示したのが、写真俳句というジャンルでした。時代の流れとして、こうしたものも、俳句のひとつの在り方として、認知されてくるのではないかと思います。そうしたとき、文字表現する俳句の方は、写真との重複を避けて、より内面的なものが求められてくると思います。小藪さんの原句も、写真俳句であれば、秀逸になったのではないかと思います。
原句 梅雨夕焼タイムセールへ駆ける父 高橋克実 才能あり1位 72点

夏井さん: 季語いいですね、梅雨夕焼。梅雨という時候と、夕焼という天文の季語が合体して、一つの季語になったものです。タイムセールという言葉もうまく使いましたね。これで、場所とか場面とかが一気に浮かびます。どこも情報が被ってなく、父の背後に梅雨夕焼がもう一回見えてくる。季語を主役とする配慮もできている。そういう語順になっています。
游々子: 情報の重なりという事でいえば、タイムセールは大方、夕方に行われるので、夕焼けとは重なっています。しかし、重なっているからこそ、臨場感が増すのであって、一概に重なっているからと排除できるものではありません。では、どこまでの微妙な重なりが最善なのかというと、それは人間には分からない領域であり、人間の俳句とは、そういう判別できないところを楽しむ文芸であるといえます。


